ブログ
2026.10.06
【セミナー開催レポート】若手人材育成フォーラム2026|東京・大阪

ご来場いただいたみなさま、誠にありがとうございました。
テーマは「経験から学び、AIと共に価値を生む人づくり・組織づくり」です。
若手が担ってきた定型業務はAIや外注に置き換わり、仕事をしながら自然に覚えていく機会が減っています。
では、若手はこれから何から学べばいいのか。この問いを、登壇者のみなさんと会場ごとに異なる角度から考えました。
第1部は両会場共通で、経験学習研究の第一人者である青山学院大学の松尾睦教授にご登壇いただきました。
第2部と第3部は、東京と大阪でゲストもテーマも異なる講演にて実施をいたしました。
本記事では、講演の様子を一部レポート形式にてお伝えいたします。
開催概要
若手には、早く戦力になることに加えて、未知の環境や新しい役割のなかでも経験から学び、成長し続ける力が求められています。ファーストキャリアはその力を表す概念として「ラーニング・アジリティ」に着目し、本フォーラムの軸に据えました。
大阪会場 日時:2026年9月1日(火)13:30〜17:00 会場:梅田スカイビル スカイルーム
東京会場 日時:2026年9月9日(水)13:30〜17:00 会場:赤坂インターシティコンファレンス
対象:人事部門責任者、育成ご担当者(事業部門人事を含む)
本記事の要点
- 若手が担ってきた定型業務が減り、仕事を通じて自然に学ぶ機会が細っている。一方で、若手に任される仕事は高度化している。
- これからの若手に必要なのは、経験から学び続ける力「ラーニング・アジリティ」(変化適応性・思考柔軟性・対人柔軟性)。育てる鍵は、言葉で教えてから考えさせることと、「頑張ればできる」小さな成功を積み重ねること(第1部・松尾教授)。
- 挑戦と振り返りが現場で続かないのは、学習が周りから見えず、成果だけが評価されやすいから。学習の見える化を「仕事」として組み込む仕組みが必要になる(東京第2部)。
第1部:「それらしい答え」が溢れる時代で、若手は経験からどう学ぶ?

登壇者
青山学院大学
経営学部 経営学科 教授
松尾 睦 氏
1988年小樽商科大学商学部卒業。2004年、英国ランカスター大学大学院博士課程修了(Ph.D)。岡山商科大学商学部助教授、小樽商科大学商学研究科教授、神戸大学経営学研究科教授、北海道大学経営学研究院教授を経て現職。

登壇者
株式会社ファーストキャリア
営業本部 営業部 部長
河野 裕介
大手人材企業に入社後、理系人材を対象にした人材サービスの営業に従事し、大手メーカー・国立大学の研究室等を担当。現在は株式会社ファーストキャリアにて各業界のリーディングカンパニーを対象に若手社員育成、育成体系構築・現場調査コンサルティングを行いつつ、自社のオンボーディング(新入社員・中途社員)を推進。
若手が担ってきた定型的な作業が減る一方で、早い時期から高度な仕事を任される若手が増えています。仕事を通じて自然に学ぶ機会が細るなか、若手の「経験から学ぶ力」をどう育てるのか。第1部では、経験学習研究の第一人者である松尾教授と、「ラーニング・アジリティ」を軸に考えました。
若手を取り巻く「仕事」と「学び」の変化

会社が若手に任せる仕事は、この10年で大きく変わりました。外注や業務委託、さまざまなサービスの活用によって、若手が担ってきた仕事は減っています。労働人口が減るなか、少ない人数で業務を回す必要も高まっています。その結果、仕事を教えたあと先輩がそばで様子を見る、という育成が難しくなりました。早い段階から一人で任せるケースが増え、育成にかけられる時間、いわば「育成密度」が下がっています。
一方で、若手が担う仕事そのものは高度化しています。AIの普及で、この傾向はさらに進むでしょう。見落とされがちなのが、若手が担ってきた「エントリー業務」の育成機能です。たとえば議事録作成では、会話に出てきた知らない言葉を調べ、話の内容を整理するなかで、仕事に必要な知識が身につきました。会社やビジネスの文脈を理解する機会にもなっていました。エントリー業務が減るなら、そこにあった学びの機会をどう補うかを考えなければなりません。
若手本人の側にも、難しさがあります。ファーストキャリアの「2026年度新入社員入社前調査」では、正解のない状況でも自ら考えて進めようとする「不確実性への対処」が64.9%だったのに対し、進め方やルールが明確に示された状況を求める「構造化ニーズ」は81.2%でした。会社は不確実性の高い仕事を早くから任せたい。本人は明確な進め方を求めている。このギャップを放っておくと、わからない状況へ一歩踏み出す心理的なハードルは上がっていきます。
松尾教授、エントリー業務が減ったり高度化したりするなかで、育成のあり方も変える必要があるのでしょうか。

経験学習のインタビューをしていると、最初の3年間は地道な仕事を経験しているケースもあります。ただ、必ずしもそうした仕事を経験する必要があるわけではありません。若手に高度な仕事を任せるのであれば、それに合わせて、教える側の力も高めていくことが求められます。
「ラーニング・アジリティ」で、変化から学ぶ
経験から学ぶ力を考えるうえでキーワードになるのが「ラーニング・アジリティ」です。未知の状況でも一歩を踏み出し、一つの答えに決めつけず、自分で考えて取り組みながら経験から学んでいく力を指します。

構成要素は三つあります。変化する状況で一歩踏み出して学ぶ「変化適応性」、複数の視点から考える「思考柔軟性」、人との関わりや違いから学ぶ「対人柔軟性」です。
私が研究している「アンラーニング」も、変化適応性の土台になるものです。これまで身につけてきた知識やスキルをそのまま使い続けるのではなく、必要に応じて新しいものにアップデートしていく学習です。そのときドライバーになるのが「学習志向性」、つまり成長しようという意欲です。自分のやり方を客観的に見て「今のやり方でいいのか」と考えるメタ内省も大切になります。先輩や上司の仕事の進め方を見て「こういうやり方もある」と気づき、取り入れていく。他者から学ぶことも、アンラーニングを促します。アンラーニングは若手だけに必要なものではありません。ただ、若いうちから「自分のやり方を変えた経験」を積み重ねておくと、シニアになってからも成長し続けられます。
松尾教授は、日本企業に根付いてきた「背中を見て学べ」という職人型の育成と、ドイツのマイスター制度を対比しました。マイスター制度では、仕事を言葉で明示的に教えたうえで、応用的な部分を自分で考えさせます。
自分で考えることは大事です。ただ、材料もないまま考えさせるのではなく、教える側がしっかりと言葉で説明をしてから考えさせる。そのバランスが大事だと思います。
現場では、業務の進め方やマニュアル化された部分は教えられていても、イレギュラーな場面での判断や「どこまでやればよいのか」については、いまだに「経験すれば分かる」という指導が残っていますよね。
経験学習サイクルをしっかり理解することが大切です。学習とは、実験の繰り返しです。ちょっと頑張ればできそうな仕事を任せ、試行錯誤してもらう。失敗だけでなく、うまくいったことも振り返り、その要因を考えてもらう。小さな成功体験を積み重ねると、「自分も成長している」というポジティブな感情も生まれます。
大きな挑戦より「小さな成功」を積み重ねる

学習志向性を高めるには、何がポイントになるのでしょうか。
「Will・Must・Can」のうち、「Can」が特に大事だと思います。育て上手な人は、まずできる仕事を任せて、達成する経験を積ませています。そうすると「もうちょっとできるかもしれない」という「Will」が出てくる。本人のなかにある火種をあおいで、大きくしていくことが大切です。周りに学習志向性の高い人がいると、自分の学習志向性も高くなるというデータもあります。本人任せにせず、職場全体で高めていく環境づくりも必要です。
若手研修では「挑戦」という言葉がよく出てきますが、その定義が「大きく、稀な挑戦」になっているケースが多いと感じます。むしろ「小さく、頻繁な挑戦」を繰り返すことが求められているのではないでしょうか。
そうですね。「頑張ればできる」というラインが大事です。それも上司がそう思っているだけでなく、本人が「頑張ればできそうだ」と思えることが肝になります。自分と近い実力の人が実際にどんな行動をしたのかを示し、「これなら自分にもできそうだ」と思えるリアルなイメージを持たせるとよいでしょう。
学ぶ力そのものを高めるには、どのような設計が求められるのでしょうか。
「エンパワリングリーダー」、つまり任せて、育て、成果を出す管理職の育成が挙げられます。管理職が若手の力量を見極め、少し背伸びすればできる課題を任せる。成功体験を積み重ねてもらい、徐々に自律して仕事を進められるようにしていきます。具体的な施策としては、「管理職の指導事例を共有する会」なども有効です。管理職同士が指導方法を学び合うことで、育成する側の力も高まります。
私たちも新入社員の導入研修で「1日1チャレンジ」という取り組みを行っています。自分にとってのチャレンジを自分で選び、できた経験を増やしていく。周囲がそれを承認することも大切です。配属後は、OJTだけでなく、社員同士が学び合える場をどれだけつくれるかもポイントになると考えています。
東京第2部:日常業務の中に「学び続ける習慣」をどう根づかせるか

登壇者
TISI株式会社
産業公共事業本部 サービス・メディアビジネス事業部 プロデューサー
久保田 博 氏
2008年、TIS株式会社(現TISI株式会社)入社。営業・本部経営管理を経て、2019年より人事・組織開発領域の新規事業開発に従事。21世紀学び研究所認定「OS21トレーナー」資格保有。2022年より同研究所へ兼務出向し、所長に就任。「リフレクション(内省)」と「ダイアローグ(対話)」を組織変革の核と定め、自らも実践者として学びを深めながら、リフレクショントレーニングアプリケーション「Practice」を企画・開発。自身の部門や他社への導入を通じ、心理的安全性醸成やチームビルディングの実践知を蓄積する。日系大手企業を対象とした講演・ワークショップも多数手がける。また、社外活動として東京都奥多摩町の廃校活用施設「OKUTAMA+」の運営にも参画。「越境学習」や「ワーケーション」による新たな学びの場づくりを支援するなど、「場所・時間・組織」の枠を超えたこれからの働き方を体現している。

登壇者
株式会社ファーストキャリア
営業部 営業企画チーム マネージャー
林田 直人
株式会社ファーストキャリアに新卒入社後、日系の大手企業をクライアントとした、若手社員向けの研修企画・設計ならびにプログラムの開発業務に従事。UXデザイン・人間中心設計の考え方を応用した施策の企画と設計を得意とする。現在は新規研修プログラムの開発・設計業務、全社のマーケティング施策の企画運営、商品開発担当として活動。21世紀学び研究所認定「OS21トレーナー」資格保有。青山学院大学ワークショップデザイナー育成プログラム修了。
研修で得た知識やスキルを、日々の業務で実践し、経験から学びながら成長していくには、研修後の学習を「現場任せ」にしない仕組みづくりが必要です。本セッションでは、TISI株式会社の久保田氏をゲストに迎え、日常業務のなかで学びを継続するための考え方や方法について議論しました。
なぜ「挑戦」と「振り返り」は現場で続かないのか

経験から学ぶためには、挑戦して、その経験を振り返ることが重要です。しかし、こうした行動を日常業務のなかで継続するのは、決して簡単ではありません。その背景には、人間がもともと変化を避ける傾向があることに加え、若手が日々向き合っているのは「学習」という目標ではなく、目の前の仕事そのものだという事情があります。
新入社員であれば、与えられた仕事をきちんとこなすこと、上司や周囲に迷惑をかけないこと、組織に適応することなどに一生懸命になります。目の前の仕事を遂行することに精一杯になれば、「この経験から何を学んだのか」と立ち止まって考える余裕は持ちにくくなります。
さらに、仕事のなかには「見えるもの」と「見えないもの」があります。成果や結果は目に見えるため、上司も評価やフィードバックをしやすい。一方で、その仕事を通じて本人が何を学んだのか、どのように考え方が変わったのかといった「学習」は、本人の内側で起きているため、周囲からは見えにくいものです。
その結果、成果につながる行動は繰り返される反面、学習や振り返りは、本人も自覚しないまま流れてしまいがちです。また、組織に適応しようとするあまり、自分の感情や欲求を抑え、周囲の期待に合わせようとする「過剰適応」も、振り返りを難しくする要因の一つです。
周囲からの評価を気にする「評価懸念」が高い新入社員が多いという調査結果もあり、成果を出すことに意識が向きすぎると、自分自身の経験や感情に目を向けにくくなります。成果だけが評価される環境では、挑戦や振り返りが「余分な努力」として削られてしまう恐れがあります。だからこそ、若手のうちから成果だけでなく、学習と学習を明らかにする振り返りそのものにも動機を与えることが必要になります。
「学習」をどう見える化するか
日常業務のなかで、挑戦したり振り返ったりする場そのものが、まだ十分にないと感じます。そもそも、振り返りのやり方が分からないというケースもあります。フォロー研修は振り返りの場にはなりますが、講師や研修企画者が提供した問いについて振り返るもので、日常的に自分自身で振り返るところまでは、なかなかつながっていません。

そう考えると、学習の見える化が「仕事」になっていないことが大きいのかもしれませんね。
例えば、日報も機能していない現場が多いですよね。「こう書いたら上の人が喜ぶだろう」と考えて書くようになると、評価を意識した内容になり、日常的なツールとしても機能しにくくなることがあるように思います。
この続きは、開催レポートでお読みいただけます
このあと久保田氏は、日報が機能しない背景を掘り下げ、「反省」と「リフレクション」はどう違うのか、振り返りに使えるフレームワーク「認知の4点セット」とは何かへと話を進めました。第3部を含め、ここから先は会場ごとの開催レポートに収録しています。
東京会場レポート
第2部(続き) 日常業務の中に「学び続ける習慣」をどう根づかせるか ― 振り返り・対話・小さな挑戦を促す、現場の仕組みづくり ―

登壇者
TISI株式会社
産業公共事業本部 サービス・メディアビジネス事業部 プロデューサー
久保田 博 氏
2008年、TIS株式会社(現TISI株式会社)入社。営業・本部経営管理を経て、2019年より人事・組織開発領域の新規事業開発に従事。21世紀学び研究所認定「OS21トレーナー」資格保有。2022年より同研究所へ兼務出向し、所長に就任。「リフレクション(内省)」と「ダイアローグ(対話)」を組織変革の核と定め、自らも実践者として学びを深めながら、リフレクショントレーニングアプリケーション「Practice」を企画・開発。自身の部門や他社への導入を通じ、心理的安全性醸成やチームビルディングの実践知を蓄積する。日系大手企業を対象とした講演・ワークショップも多数手がける。また、社外活動として東京都奥多摩町の廃校活用施設「OKUTAMA+」の運営にも参画。「越境学習」や「ワーケーション」による新たな学びの場づくりを支援するなど、「場所・時間・組織」の枠を超えたこれからの働き方を体現している。
- 「反省」ではなく、経験の意味を掘り下げる
- <参考>コミュニティラーニングを支える「Practice」
第3部 AIを従業員の「最強の味方」にするか、「最大の脅威」にするか 〜全社員が足元に落ちている”宝くじ”を拾う組織づくり〜

登壇者
株式会社なかよし
代表取締役
ハヤカワ 五味 氏
多摩美術大学在学中、株式会社ウツワ設立。「feast」「ILLUMINATE」など複数のD2Cブランドを立ち上げる。2022年、ILLUMINATEを株式会社ユーグレナに売却。2024年7月より、メルカリで生成AI推進を担当。
- AIは「足元に落ちている宝くじ」
- AI時代に、人間に残る価値とは
- 正論だけでは、人はAIを使わない
- 質疑応答 -AI時代に組織が向き合うべきこと-
大阪会場レポート
第2部 若手の「探索と創造」をつくる ―ビジネスモデルキャンバスが取り戻す「小さな左手」

登壇者
一般社団法人ビジネスモデルイノベーション協会 代表理事
グロースワークス合同会社 代表
コニカミノルタ株式会社 事業開発部門 マネージャー
宮木 俊明 氏
新規事業開発・人材開発・組織開発の三位一体開発を専門とするコンサルタント兼ファシリテーター。スタートアップ創業代表、教育系ITベンチャーの事業責任者等を経て現職。新規事業やDXなどの変革について「組織内での深い実践」と「外部支援者としての幅広い実践」の両輪を、コロナ禍や生成AIの台頭などの社会の激変の中リアルタイムで実践するパラレルワーカーとして、多彩なフィールド・多様な役割でイノベーション創出に取り組んでいる。三児の父。
著書:『仕事はかどり図鑑 今日からはじめる小さなDX』『ひらめきとアイデアがあふれ出す ビジネスフレームワーク実践ブック』(共にエムディエヌコーポレーション)
- 右手の力と、「小さな左手」
- 「経験させる」だけで、人は学ぶのか
- 地図を持ち、その中に自分を置く
- 構造が見える人ほど、閉塞感を抱く
- ビジネスモデルキャンバスで、部署のつながりを描く
第3部 「人事のプロ」はAIとどう動く? 成果を出す人事組織の作り方

登壇者
人事図書館 館長
株式会社Trustyyle 代表取締役
株式会社シーベース 執行役員CHRO
吉田 洋介 氏
立命館大学院政策科学研究科修了後、2007年リクルートマネジメントソリューションズに入社。海外事業立ち上げ、九州支社長、スクール事業責任者などを歴任。2021年3月株式会社Trustyyleを設立し大手〜スタートアップまでの組織人事を支援。2024年4月東京人形町に人事図書館を設立。
著書『「人事のプロ」はこう動く』(日本実業出版社)、共著『経営に資する人事制度』(かんき出版)
- 人事課題が、経営課題の中心になる
- 「人事は存在しない問題を作り出している」
- AIで起こる3つの変化
- 人を生かして、事をなす
- 過渡期の今しかできないこと
ご参加いただいたみなさまへ
第2部と第3部は、大阪と東京で登壇者もテーマも異なります。
大阪会場にお越しいただいた方は、AI推進を担ってきたハヤカワ五味氏が語る「AI×組織づくり」を。
東京会場にお越しいただいた方は、宮木俊明氏の「小さな左手」と、吉田洋介氏が示した人事と経営のズレを。
どちらも、もう一方の会場のレポートでお読みいただけます。
是非とも以下リンクからダウンロードください。





