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2026.07.24
【セミナーレポート】27卒以降の新人育成 「AIにより“任せる仕事”が変わりゆく」中でも若手が育つ考え方

近年、多くの人事担当者様やマネージャーの方から、このような問いをお聞きするようになりました。
AIの進化は、若手が担ってきた業務のあり方を大きく変えつつあります。
しかし、本当に向き合うべき論点は「業務の変化」そのものではないかもしれません。
株式会社ファーストキャリアでは、2026年7月に「27卒以降の新人育成 ―『AIにより“任せる仕事”が変わりゆく』中でも若手が育つ考え方」と題した
オンラインセミナーを開催しました。当日は多くの人事・育成ご担当者様にご参加いただき、AI時代の若手育成をめぐる論点についての対話がなされました。
本記事では、当日の内容をレポート形式でお届けします。この記事を読むと、次の3点が分かります。
•AIによって、若手に任せる仕事と「育ち方」がどう変わるのか
•従来のOJTや新人研修で、これから何が足りなくなるのか
•これからの若手に求められる力と、育成設計を見直す視点
登壇者プロフィール

河野 裕介(こうの ゆうすけ)
株式会社ファーストキャリア 営業部 シニア・マネージャー
大手人材企業に入社後、理系人材を対象とした人材サービスの営業に従事。大手メーカーや国立大学の研究室などを担当する。現在は株式会社ファーストキャリアにて、各業界のリーディングカンパニーを対象とした若手社員育成、育成体系の構築、現場調査コンサルティングを手がけながら、自社のオンボーディング(新入社員・中途社員)推進をリードしている。
AI時代、若手に「任せる仕事」はどう変わるのか
実は、AI登場以前から変化は始まっていた
結論からお伝えすると、AIの進化によって若手に任せる「作業」は減り、任される「仕事」はより高度になっていきます。まずは、この変化の全体像から見ていきましょう。「若手の仕事が変わる」と聞くと、AIによる急激な変化を思い浮かべる方が多いかもしれません。この変化はAIが本格化する以前から、すでに10年単位で進行してきました。背景にあるのは、テクノロジーの進化による2つの流れです。
若手に任せる「作業」が減っている
→ERP・シェアードサービス・BPOなどにより、定型業務が現場から外部へ。RPAや各種SaaSで、集計・転記・処理が自動化される
若手に任される「仕事」が高度化している
→組織の少人数化により、一人が広い範囲を担当。下積み期間を経ずに、早期の戦力化を期待される
つまり、若手はこれまでも少しずつ「作業する人」から「判断する人」へと、期待される役割が移ってきたわけです。
そこにAIが入り、変化が一気に加速する
この流れを決定的に加速させるのが、生成AIの登場です。セミナーで特に印象的だったのは、「若手のエントリー業務は、AIが最も得意な領域とほぼ重なる」という指摘でした。情報収集、資料作成、データ整理、議事録――こうした新人が任されてきた業務と、AIの得意領域の重複率は95%以上にのぼると言います。
その結果、若手の仕事はこう変わります。これまでのように、簡単な作業から少しずつ経験を積むのではありません。入社直後から「AIに指示を出し、出力を受け取り、その内容を判断し、実行する」という、いわば従来の中堅社員が担ってきた仕事を、いきなり任される時代が近づいているのです。
見落とされてきた事実──若手の「作業」は“育成の仕組み”でもあった
ここからが、セミナーで最も重要な論点でした。AIが若手の作業を引き受けてくれるなら、一見すると良いことのように思えます。しかし河野は、そこに大きな見落としがあると指摘します。消えていくエントリー業務は、単なる「作業」ではなく、若手が一人前になるための“育成の仕組み”そのものだった、という視点です。
議事録づくりが、若手を育てていた
分かりやすい例として、セミナーで紹介されたのが「議事録の作成」です。若手が議事録を書くという作業には、実はいくつもの学びが埋め込まれていました。
・飛び交う専門用語の意味を、調べながら理解する
・誰が何のために発言したのか、会議の文脈を把握する
・話の流れを整理し、要点を構造化する
・誰がキーマンで、何をもとに意思決定が進むのかを断片的に知る
つまり若手は、議事録という「作業」を通じて、業界知識・社内ルール・判断軸・仕事の全体像を、自然と体に染み込ませていたわけです。これは私自身が現場で見てきたことですが――と河野は自らの経験を振り返ります。担当していたメーカー営業の現場でも、同じことが起きていました。納期回答や在庫確認のために生産・物流へ問い合わせる。その一次対応の繰り返しを通じて、若手は生産リードタイムやサプライチェーンの制約を肌で覚えていきました。訪問への同行を重ねるうちに、顧客が何を気にして意思決定するのかも見えてきます。
こうした「点」が少しずつつながり、やがて仕事の全体像が「体に入っていく」。これが、これまで当たり前だった育成のプロセスでした。
消えるのは“作業”ではなく、“育つ仕組み”そのもの
ここに、AI時代の育成が抱える本質的な課題があります。エントリー業務がAIに置き換わると、作業の負担は確かに軽くなります。しかし同時に、若手が「体で覚える」機会そのものが失われてしまうのです。
セミナーでは、この構造が「階段」のたとえで説明されていました。これまでの若手は、低い段差を一段ずつ登りながら、無理なく「一人前の判断者」へと近づいていくことができました。ところが、AIがその序盤の階段を引き受けてしまうと、下の段が丸ごと消えてしまいます。残るのは、いきなり高い段差だけ。若手は最初の一歩から、「AIが作った提案を、顧客に合わせて判断・修正する」という難度の高い仕事に向き合うことになります。

そして、ここで見落としてはならない点があります。この「育つ仕組みが失われる」という現象は、AIを本格的に導入している一部の先進企業だけの話ではありません。河野も、AI活用の進み具合に関わらず、業務の高度化と若手の特徴の変化は、すでにあらゆる業界で起きていると強調していました。「うちはまだAIを本格導入していないから」と考えている企業にとっても、これは決して他人事ではないのです。
若手を追い込む“挟み撃ち”──期待は上がり、踏み出す力は育ちにくい
ここまでの話を、若手本人の視点から捉え直すと、彼らが非常に苦しい状況に置かれつつあることが見えてきます。セミナーで河野は、これからの若手が「外からの要求」と「内側の心理的な抵抗」の間で板挟みになると指摘しました。この2つの力が、若手が一歩を踏み出すハードルを高くしてしまうのです。
外からの要求は、これまで以上に高くなる
まず、若手が外部から求められる水準は、明確に上がっていきます。前述の通り、AIがエントリー業務を引き受けることで、若手は入社直後から全体の把握や判断、そして成果物の検証を求められるようになります。かつてのように、簡単な作業からゆっくり慣れていく助走期間は、もう用意されていません。
内側の構えは、むしろ逆行してしまう
やっかいなのは、外からの要求が上がる一方で、若手の内面はそれとは逆の方向に向かいやすいことです。AIに頼れば頼るほど、「まず正解を出さなければ」という正解志向が強まります。加えて、失敗を避けたいというリスク回避の意識も高まりがちです。その結果、答えのない曖昧な状況で、自ら判断して動くことが、かえって難しくなってしまいます。
つまり、こういう構図です。
期待される水準は上がるのに、それを超えていくための「構え」は育ちにくい。この挟み撃ちこそが、AI時代の若手が直面する困難の正体だと言えます。
これからの若手に必要な力とは──「ラーニングアジリティ」
では、こうした厳しい環境の中で、若手が自力で育っていくためには何が必要なのでしょうか。セミナーで河野が挙げたのが、「ラーニングアジリティ」という力でした。聞き慣れない言葉かもしれませんが、意味はとてもシンプルです。
ラーニングアジリティとは?
ラーニングアジリティとは、「新たな経験から素早く学び、その学びを未知の状況に応用できる能力」のことです。
なぜ今、この力が重要なのでしょうか。変化が激しく不確実性の高い時代には、過去の成功法則が通用しなくなる場面が増えていきます。経験したことのない、正解のない課題に向き合う機会が増えるほど、「これまでのやり方」に縛られず、その場で学び取って応用していく力がものを言うわけです。セミナーでは、この考え方が育成テーマの転換点として、次のように表現されていました。
「何を学んできた人か」から「どれだけ学べる力がある人か」へ
これまで評価されてきた「知識やスキルの蓄積量」よりも、「新しい環境で学び続けられる力」そのものを育てる。ここに、これからの若手育成の重心が移っていくのです。
ラーニングアジリティを構成する3つの要素
ラーニングアジリティは、3つの柔軟性から成り立っています。

この中核にあるのが「変化適応性」です。まず自ら一歩を踏み出せること。そのうえで「思考」と「対人」の柔軟性が加わることで、変化を乗りこなす力が高まっていきます。若手が踏み出しにくくなっているまさにその状況だからこそ、この「変化適応性=自ら一歩踏み出す力」を意図的に育てることが、これまで以上に重要になっているのです。
育成の発想を、2つ「逆転」させる
では、ラーニングアジリティを育てるために、企業は何を変えればよいのでしょうか。河野は、育成の前提を2つ逆転させる必要があると語りました。
ポイントは、次年度つくるべきものが「AIを使える研修」ではないということです。目指すべきは、“AI時代に自力で育つ若手を生む仕組み”そのものだと、河野は強調していました。
まず、どこから変えるか──「導入研修」と「配属後1年」
ここまで読んで、「では具体的に何から手をつければいいのか」と感じた方も多いのではないでしょうか。
その前に、一つ強調しておきたいことがあります。ここまでお伝えしてきた変化は、AI活用が進んだ企業だけの話ではありません。業務の高度化と若手の特徴の変化は、AI導入の進み具合に関わらず、すでにあらゆる業界で始まっています。「自社はまだ本格的にAIを導入していないから、もう少し先の話だ」と考えるのは危険だと、河野は繰り返し注意を促していました。だからこそ、着手のタイミングは「今」なのです。
そのうえで河野が挙げたのが、優先して見直すべき2つのポイントでした。ラーニングアジリティを育てるうえで特に重要になるのが、この2つのタイミングだと言います。
① 導入研修:学生から社会人への「切り替え」の場
1つめは、入社直後の導入研修です。学生から社会人へと切り替わるこの時期は、社会人としての思考やスタンス、学び方、そしてAIとの付き合い方を最初に「搭載」する絶好のタイミングです。ここで「自分で学び方を身につける」という構えを持てるかどうかが、その後の育成を大きく左右します。
② 配属後1年間:現場で「経験から学ぶ」を回す
2つめは、配属されてからの最初の1年間です。この時期に大切なのは、現場で「経験から学ぶ」サイクルを確実に回すことです。上司やOJT担当者による受け入れ、こまめな振り返りとフィードバック、そしてそれを個人任せにしない仕組み。これらによって、日々の経験が着実に学びへと変わっていきます。この2つは、いわば若手育成の「土台」にあたる期間です。まずはここから見直しに着手することが、AI時代に自力で育つ若手を生む第一歩になります。
まとめ──「何を学んだか」から「どれだけ学べるか」へ
今回のセミナーを通じて見えてきたのは、AIの登場が単なる「業務効率化」の話にとどまらないということでした。
これまで若手は、エントリー業務という低い階段を一段ずつ登りながら、時間をかけて一人前の判断者へと育っていきました。しかしAIがその序盤の階段を引き受けることで、「経験を積めば、時間とともに自然に育つ」という前提そのものが崩れつつあります。
だからこそ、これからの育成に求められるのは、若手に「何を教えるか」を増やすことではありません。若手自身が「自力で学び続けられる力」、すなわちラーニングアジリティを育てられる環境を、意図的に設計することです。
「何を学んできた人か」から、「どれだけ学べる力がある人か」へ。
この転換にいち早く向き合い、当たり前だった“育成の仕組み”がない環境で、いかに早く若手を一人前の判断者へと育てられるか。それが、これからの企業の競争優位を左右していくのではないでしょうか。
「若手人材育成フォーラム2026」開催のご案内
本記事でご紹介した内容について「自社の育成設計をより深く見直したい」「他社の事例や専門家の知見に触れたい」とお感じの方に向けて、
株式会社ファーストキャリアでは「若手人材育成フォーラム2026」を開催します。
「経験から学び、AIと共に価値を生む人づくり・組織づくり」をテーマに、2会場での開催を予定しています。
東京会場には、「経験学習」研究の第一人者である松尾睦教授の登壇も予定しています。若手育成のこれからを考えるうえで、大きなヒントを得られる場になるはずです。
是非とも奮ってご参加ください。本フォーラムや、貴社の若手育成に関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。





