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2026.03.18
【前編】中堅社員の私が突如“新人”になって気づいたこと ~ オンボーディング設計に欠かせない“1年目の視界” ~
体系化、OJT・メンター制度の導入など、以前に比べて格段に充実してきました。
それでもなお、多くの人事や受け入れ職場からはこのような声が聞こえてきます。
「最近の新人は受け身だ」
「主体性がない」
「新人が何を考えているのかわからない」
制度は着実に整ってきているにも関わらず、なぜこうした課題が消えないのでしょうか。
もしかすると私たちは、施策や仕組みを“整備すること”に意識が向くあまり、新規入社者が実際にどのような景色を見ているのか――その“視界”を、
十分に理解・共有しないまま設計や運用をしてはいないでしょうか。
制度や施策があるに越したことはありません。しかし、それらが本当に現場で機能するかどうかは、「1年目の視界」を踏まえた施策設計と職場づくりができているかどうかにかかっているのではないでしょうか。
本記事では、私自身が異業種である農業に飛び込み、“新人”として現場に立った体験を通して見えた「1年目の視界」をもとに、オンボーディング設計において、“新人目線”がなぜ欠かせないのかについて考えていきます。
はじめに
私の実家は、中規模のコメ農家を営んでいます。
一方で、私のキャリアはというと、自動車メーカーでエンジンの研究開発と商品戦略企画に携わり、現在はファーストキャリアにてマーケティング業務を担当しています。
農家に生まれたとはいえ、農業とは無縁のキャリアを歩んできた私が、突然コメ作りの現場に立ってあらためて感じた“新人の視界”について書いていきたいと思います。
突然、“1年目”になった春
昨年4月、父が倒れました。
それまで、実家の米農家は父がほぼ一人で切り盛りし、母がそれを支えるという形で成り立っていました。姉弟は私も含め3人いますが、それぞれ家庭や仕事の自由度も高くありません。そのため多少は融通が利く私が、現場をリードすることになりました。
米づくりは身近な存在でしたが、繁忙期に部分的に手伝いをしていた程度で、全体の流れを「なんとなく知っている」という状態でした。現場を仕切っていた父は入院しており、引継ぎ受けることもできず、右も左もわかりません。
・ 何のためにどんな作業をするのか?
・ 作業をするために何を準備すればよいのか?
・ 分からないことを誰にきけばよいのか?
・ どこに何が置いてあるのか?
・ 田んぼがどこにいくつあるのか?
という具合に、新しい環境に飛び込んだ“1年目”の状態でのスタートでした。また、企業のように導入研修もなければ、OJTトレーナーもいない。
まさに、オンボーディングの“オ”の字もない環境だったのです。
はじめてトラクターのハンドルを握った日
4月は田植えに向けた準備をしなくてはいけません。
田植えができる状態の土を作るために「代掻き」という作業が必要なのですが、それにはトラクターが必須です。
田舎とはいえ、田んぼに移動するためには公道を走行せざるを得ません。実家のトラクターは大型だったので、普通自動車免許では公道を運転できません。そのため、まず必要だったのは、大型特殊免許の取得でした。
ベテラン農家さんからは「大丈夫か?田植えに間に合うか?」と心配する声をいただきました。
しかも、私はトラクターを運転したことがありませんでした。知っているのはエンジンのかけ方くらいです。
運転操作、アタッチメント交換、メンテナンス、やってはいけないことなどもわからない。
教習所でもトラクターの操作については教えてもらえません。
それでも、代掻き作業にむけて準備を進めなくてはいけないため、まずはトラクターのアタッチメント交換から始めました。Youtubeやマニュアルを
見てもわからず、ベテラン農家さんにも聞きました。しかし、メーカーやモデルも違えば細かな仕様が違うため、作業が進みません。
仕方がないので、メーカーのメカニックに来ていただきました。
しかし、プロのメカニックといっても、社外品のアタッチメントのことまで完全に把握しているわけではありません。
そのため、アタッチメント交換に苦戦してしまい、3時間かかりました。当時はわかりませんでしたが、正しい交換方法を知っていれば30分程度で終わる作業でした。
また、ついでに基本的な操作方法も教えてもらい、何とか運転できるようにはなりました。
そして、無事に免許も取得し、実際に田んぼでの作業となると、話は変わってきます。会社でのオフィスワークと違って、本当に命に関わるためです。
田んぼへの出入りは特に危険で、操作を誤れば簡単に横転しますし、機械に巻き込まれれば大事故につながります。安全面についてはベテラン農家さんからも何度も気を付けるように注意を受けました。
基本的に作業は一人で行うため、何か起きた場合は、誰かがすぐに助けが来るわけではありませんし、助けを呼べるとも限りません。
そのため、メーカーで働いてこともあり安全面は特に気を付けて作業をしていましたが、ヒヤリハットを何度か経験しました。どうしても頭でわかっていたとしても、体に染み込むまで時間がかかるため、徹底した教育が欠かせないことを痛感しました。
苗づくりと状態管理
田植えの前には、植えるための苗を育てる必要があります。
当時の私は、スポットで各工程を手伝ったことしかないため、苗づくりの段取りや準備を把握していませんでした。
大まかな流れでも、育苗ハウスへのビニール張り、種もみづくり、苗箱への播種作業、発芽器での発芽管理、ハウスへの苗箱ならべ、ハウスの温度管理と水やりという工程があります。
育苗ハウスのビニール張り一つをとっても、一人ではできないため、家族のスケジュールを調整し、天気は晴れかつ風速2m/s以下の日に行うことが必要となります。
風速2m/sも3m/sもそんなに変わらないだろうと思っていましたが、実際に作業してみると風速3m/sではビニールが風にあおられて、作業効率が極端に下がることが分かりました。長年の経験からくる現場の知恵の重要性を感じました。
また、苗づくりにおける育苗ハウスの温度管理と水やりは難易度が高かったです。とくに、発芽したての苗はデリケートなため、直射日光を避けるため、遮光シートをかぶせたり、苗土が乾かないように水をまいたりする必要があります。
さらに、温度が高いと苗はぐんぐん成長します。田植えの時に苗が大きすぎると、田植え機で植えることができなくなってしまうため、温度管理をして成長度合いをコントロールする必要があります。
しかし、近年の異常気象により例年より暑かったため、例年のやり方を遵守しているだけでは苗の生育管理が難しい。
現場では、作業目的を押さえることはもちろん必要ですが、そのうえで目の前の起きていることをべースに判断することが求められます。
あらためて工程管理ではなく、「どのような状態の時に、どうすればよいのか」という状態管理の重要性を感じました。とはいえ、1年目の私がその時々の状態を見て判断できるわけがありません。
なので、懇意にしている近所の農家さんや肥料業者さんに、現場・現物をみながら具体的な管理や作業のノウハウを教えてもらいながら実践していくしかありませんでした。
常に「これで本当によいのだろうか、間違っていないだろうか」という漠然とした不安を抱えたまま、前に進んでいくしかありません。
誰にでもはじめてはありますが、経験者にはない「ストレス」を常に感じつづけるのが1年目の宿命かと思います。
判断基準がないままの耕運依頼
「親父さん、大丈夫か? 今年はどうするんだ?」
4月の終わり、近所の農家さんにそう声をかけられました。
父が倒れたことは、地域ではすでに知られていました。田舎では、例年と異なる動きがあればすぐに噂が広がります。
「いまは大型特殊の免許を取りに行っているところです」
そう答えると、間髪入れずに言われました。
「それじゃ間に合わない。耕運、うちでやるよ。」
一瞬、言葉の意味を飲み込めませんでした。なぜ耕運する必要があるのだろう――。
耕運とは代掻きの前に土を砕き、雑草をすき込み、土壌を整える作業です。それを外注したほうが良いという提案でした。
その後、父が不在の状況ではすべての田んぼを回すことはできないと判断し、別の農家さんに田植え作業をお願いしに行き、一緒に田んぼを回ったときのことです。
田んぼから伸び始めた雑草を見ながら、こう言われました。
「これだけ雑草が大きくなると、代掻きだけじゃ無理だよ。一回耕運入れないと」
その口調は、断定でした。私は相槌をうちながらも、内心はざわついていました。
耕運を外注すれば、数十万円ほどかかります。当時は、作業代金の相場も把握できていませんでした。
一般的なビジネスとは異なり、田舎の商習慣では基本的に口約束で、事前に見積もりなどを出すような文化はありません。なので、大体このくらいという金額だろうと推測するしかありませんでした。
金額をきいたところで、「大丈夫だ、心配するな!」の一点張りで具体的な数字は教えてくれません。
なお、米の価格は毎年8月以降にならないと相場がわかりません。つまり、売上がいくらになるかも見えないまま、先に追加の経費を決めることになるのです。
農業は、経費が積み上がる構造です。外注費は、そのまま利益を圧迫します。
「もし、米価格が下がったら」
「もし、収量が落ちたら」
「もし、想定より経費がかさんだら」
「入院費用だってかかってくるのに、、、できる限り経費は押さえないと、、、」
そんな言葉が、頭の奥で小さく鳴っていました。しかし同時に、別の思考も働いていました。
勧めてくれたのは、地域でも名の知れた大規模農家さんです。
めったに人を褒めない父が信頼を寄せていた方でした。
「言っていることは、間違いないだろう」
そう思えるだけの実績と信頼に加え、人柄があります。しかし、頭では理解しましたが、心から“納得している”わけではありませんでした。
「なぜ、代掻き前に耕運が必須なのか」
「雑草をすき込めないと、具体的にどんなリスクがあるのか」
「それが収量にどの程度影響するのか」
本当は、一つひとつ聞きたかった。しかし、うちよりも大規模で忙しい中で対応してくれていて、かつ私とは初対面、しかも農道での立ち話という状況だったため、聞くに聞けませんでした。
何も知らない自分が、向こうからすれば基本的なことをいちいち質問する。
「またそんなこと聞くの?」と思われないだろうか。くどいと思われないだろうか。
父が築いてきた信頼関係の上に立っている状況で、私の不用意なコミュニケーションで、その信頼を揺るがせるわけにはいきません。
自分の理解や気持ちが追いつかないまま、判断だけが迫ってくる。
外注費、農薬代、肥料代、燃料費、機械のメンテナンス費。そして、見えない米価。
頭の中に、明確なシミュレーションはありません。あるのは、漠然とした不安だけです。
それでも、最終的に私は「お願いします」と言いました。
自分で考えて決めたというよりも、「自分では判断しきれないと認めた」に近い感覚でした。
決断したあとも、不安は消えません。本当に必要だったのか。自分は言われるがままに動いていないか。
主体性がないのではないか。そんな思いが、何度もよぎりました。
今振り返れば、あの判断は最適解でした。作業代も価格も適正で、結果的にスムーズに代掻き作業に進むことができました。
しかし、当時の私は「自分で考えて選んだ」のではなく、全体像が見えていないまま、信頼と不安のあいだで流されていたとうい感覚でした。
判断基準となる経験も知識も自分の中にない、身内の中に相談できる人間もいない環境での判断は、金額以上に重かったです。
代掻きという“取り返しのつかない工程”
田植えの前に行う重要な作業に、「代掻き(しろかき)」という工程があります。
代掻きとは、田んぼに水を張り、トラクターの後ろにつけた「ハロー」と呼ばれる器具で土をかき混ぜながら、田面を平らに均す作業のことです。
簡単に言えば、苗を植えるための“土台づくり”です。この仕上がりが、その年の米づくりを大きく左右します。
田面がきれいに平らになっていれば、水を均一に張ることができます。水が均一であれば、除草剤も均一に効きます。
逆に、わずかでも高低差があれば、水深にムラが生まれ、雑草が生えやすくなります。最終的には、収量や品質にまで影響します。
つまり代掻きは、単なる「準備作業」ではなく、一年の出来を左右する基礎工事なのです。
準備に3日、本番は数時間
代掻きは、いきなりトラクターで田んぼに入って行える作業ではありません。
まず田んぼに水を入れて、乾いた土に水を十分に染み込ませます。そのうえで、水位を「多すぎず、少なすぎず」の状態まで調整します。
この“下ごしらえ”に、2〜3日かかります。しかも、それをすべての田んぼで行う必要があります。
「◯日に田植えをするから、今日はここに水を入れて、あそこは抜かないといけない」
日程と水の状態を頭の中で組み立てながら、代掻きを進めていく必要がありました。
また、代掻きで目指す田面とはどんな状態なのか。どのように田んぼ内を回ればよいのか。
Youtubeで調べたり人に聞いたりしましたが、田んぼごとに土の質も、水持ちも違う。
参考にはなるが、答えにはならない。結局、手探りでやっていくしかありません。
最適解が数値化できない世界
代掻きの難しさは、「これが最適解」という明確な数値がないことでした。
代掻きでは、トラクターの後ろに「ハロー」と呼ばれる農機具を取り付けます。
ハローとは、回転する爪(つめ)で土をかき混ぜ、細かく砕きながら平らに均すための機械です。
いわば、田んぼの土を仕上げる“最後のアイロン”のような役割を担っています。
ハローの回転数、トラクターのギア、エンジン回転数、そして田んぼの土と水の比率。
それらの組み合わせで、仕上がりは大きく変わります。
もちろん、ある程度の目安はありまが、田んぼごとに土の質も、水持ちも違います。
昨日の田んぼでうまくいった設定が、今日の田んぼでは通用しません。
水が多すぎれば、土がトロトロになり、均平の状態が見えなくなり、稲株やわらが土にすき込めない。
水が少なすぎれば、機械に負担がかかるうえに、タイヤ跡が残り、田面がきれいに均せない。
父には「土を見ればわかる」と言われましたが、見ても触っても違いがよくわからない。
同じ景色を見ているはずなのに、経験者と自分とでは、読み取れる情報量がまるで違うということを痛感しました。
5cmの慢心
代掻き作業の終盤、自分なりに手応えを感じ始めました。
設定を探り当てるまでの時間が短くなり、やり直す回数も減り、着実に練度が上がってきました。
近所のベテラン農家さんから「父ちゃんより上手いじゃないの」と言われたときは、正直うれしかったですし、会社では味わえない成長実感を感じました。
しかし、慣れてきたころにやはり油断はするもので、均しきれなかった箇所があったのです。高さにして5cm。
「このくらいなら大丈夫だろう」
そう思ってやり直しませんでした。
部分的に高いと、水深が足りず土が水に潜りません。そうすると除草剤の効きが悪くなり、雑草が生えます。
雑草が生えると、土の栄養がとられてしまい、収量が下がってしまします。
気づいたときに修正すれば、5分くらいの作業で済んだものが、面倒くさがったために、後工程や収量に影響があることを痛感するのは、田植えが終わった後のことです。
田植えは準備が8割
代掻きを終えると、いよいよ田植えです。
田植えというと、素足で田んぼに入り、手で植える光景をイメージする方が多いと思います。
実際の現場では、「田植え機」を使うのが一般的です。はたから見ると、機械に乗って田んぼを走るだけ、あとは機械が自動で植えてくれるという作業に見えるかもしれません。しかし、やってみるとわかりますが、そう単純な作業ではありません。
苗の状態、田んぼの状態を踏まえて、田植え機の各設定を微調整しながら田植えを行っています。それらがすべて揃って初めて、きれいに苗を植えることができます。どれか一つでも条件が合っていないと、苗はうまく根付きません。
これまで田植え作業自体は手伝ったことがありましたが、事前準備や機械の微調整はやったことがありませんでした。
仕事は準備は8割という言葉があるように、もっとも大変で重要な部分は何も知りませんでした。
父が担っていた「見えない準備」
これまで我が家では、父が田植えの準備をすべて担っていました。
まずは、田植え機の点検整備です。シーズン前に機械の状態を整えます。農業機械は年に1シーズンしか使わないものがほとんどで、トラブルがあると作業が止まってしまうため、整備が欠かせません。
それに加えて、田植え機の設定も必要です。
苗をどのくらいの量で取り出すのか。
どのくらいの深さで植えるのか。
株と株の間隔はどうするのか。
さらに、除草剤や肥料の散布量の調整もあります。
私がやったことのある作業といえば、田植え機の運転と苗・肥料の補充という部分的な役割だけでした。
田植え機の準備や設定、資材の調整などを誰がやっているのか、深く考えたことはありませんでした。
いざ自分が担当する立場になって初めて気づきました。田植えとは、機械に苗を積んで走る作業ではない。
その前段に、膨大な準備があるということを。
はじめての田植え機の整備
田植え機の整備は、乗用車とは全く違います。
そのため取り扱い説明書を読んだり、Youtubeで動画を見ながら、おそるおそるやってみるしかありませんでした。それでもやはり分からないことが
たくさんあるため、農機具の整備士さん、近所の農家さんに教えてもらいながら、整備や調整を進めるしかありませんでした。
念入りにするところ、スキップしてよいところなど、プロやベテランの方のみが知っている知見がそこにはありました。
ネット検索やAIなどでは知りえないノウハウだらけでした。
教えてもらえるのはあくまで基本と基準なので、それを踏まえて、最後は実際にやってみて調整するということを繰り返していくしかありません。
しかし、そのなかで常に「これで良いのだろうか?」という不安を抱えていました。あらためて、上司や先輩からフィードバックをもらえる環境がある会社のすばらしさを再認識しました。
水量調整という難しさ
田植えをするためには、田んぼの水量も調整しなければなりません。
水が多すぎると植え付けがうまくいかず、少なすぎると田植え機の轍が残り田面が荒れてしまいます。
なので、ちょうどよい水深を狙って、水量を調整する必要があります。しかし、その調整に時間がかかることです。
田んぼに水を入れるのも、抜くのも、半日以上かかります。
うっかり、入水、落水を忘れたりすると、その修正に丸一日かかることもあります。
代掻きのタイミング、苗の生育状態、田植えの日程。それらを頭の中で組み合わせながら、「いつ水を入れるか」「いつ水を抜くか」を決めていく必要がありました。
田植え機はただ乗っているだけじゃない
いよいよ田植えを始めても、苦労は続きました。
田植え機は、苗を自動で植えてくれる機械です。しかし、田んぼごとに条件が違うため、完全に自動というわけにはいきません。土が粘土質で粘り気があったり、砂質でさらさらしていたり、さらには苗の密度や生育状態も考慮して、
植え付けの深さや苗取り量を微調整する必要があります。
さらに、同じ田んぼ内でも場所によって性質が異なるため、調整をしながら作業を進める必要があります。
また、田植え機を運転してみるとわかりますが、田んぼの中は凸凹しており、常に修正舵を繰り返していないとまっすぐ進みません。
修正舵をしながら、植えた苗の状態、土の硬い柔らかいを見極めて設定や走行速度の調整をおこなう必要があるわけです。作業に慣れるまでは、何か
一つを意識すると、何かを忘れてしまう状態が続いてしまいます。また集中力が何時間も継続できるわけもなく、細かなミスをしばらく続きました。
ベテランのようにスピーディーに正確に綺麗に作業をこなすには、一朝一夕にはいかずどうしても練度が上がるまでには時間がかかります。
そして、ようやく慣れて来た頃には、作業が終わり、来年に思い出すところから始めるというサイクルが繰り返されます。
まとめ
突然農業の現場に立つことになってから、代掻き、苗づくり、田植えと、これまで部分的にしか知らなかった工程をひとつずつ経験してきました。
その中で、新しい環境に飛び込んだ人に対するオンボーディング施策や受け入れ環境の整備が、いかに重要かを身をもって実感しました。
まず大切なのは、仕事を進めるうえで必要な
・ 人(相談できる相手)
・ 物(必要な道具や設備)
・ 情報(判断の基準や知識)
が揃っているかどうかです。
そして、もし揃っていないのであれば、それを補完する仕組みやサポートがあるかどうかです。
必要なものが揃っているだけで、新人は余計な不安や試行錯誤に時間を使うことなく、目の前の仕事に集中することができます。
しかし、その上でも経験のない“1年目”の状態では、
• そもそも何が分かっていないのか
• 何が問題なのか
• 何を基準に判断すればよいのか
という状態の中で、仕事を進めていくことになります。
こうした経験を通して、私は「1年目の視界」というものを強く意識するようになりました。
後編では、田植えの後に始まる 水管理、除草、収穫 の現場を振り返りながら、この体験から見えてきた 新人が見ている景色 と、そこから考える オンボーディング設計のヒント について整理していきます。



