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「点」の研修から、「線と面」の育成へ。人事制度改定から始まった若手育成体系の再構築 |グローリー株式会社

研修(階層別・選択型) 育成体系・制度設計支援
グローリー株式会社
近年、多くの企業が激しい市場環境の変化に対応するため、組織改革や人事制度の刷新に舵を切っています。独自のコア技術を強みに、金融機関や流通・小売向けの通貨処理機やセルフサービス機器などを手がけ、グローバル市場で世界トップクラスのシェアを誇るものづくり企業・グローリー株式会社も、その例外ではありません。

同社は2024年度、成果主義へのシフトや昇格スピードの早期化を掲げた長期ビジョンの実現に向けた組織づくり、人づくりのため新たな人事制度をスタート。これに先立ち、2022年から約2年をかけて、若手社員の育成体系をドラスティックに見直しました。

単発の「点」の研修から、1〜3年目、そして最初の昇級までを見据えた、一貫性のある育成体系へ。この一大プロジェクトの背景には、どのような組織課題があり、いかにして新たな育成体系が形作られたのでしょうか。

今回は、若手育成体系の刷新プロジェクトに参画し、現在はチームマネージャーとして教育全般を統括する総務本部 人事部の井上 貴滉さん(以下、敬称略)にお話を伺いました。

グローリー株式会社 総務本部 人事部 チームマネージャー 井上 貴滉 様

変革期でも変わらない。グローリーが育てたい「自律した人材」

――はじめに、井上様のこれまでのキャリアについて教えていただけますでしょうか。

井上 2014年に入社後、生産部門、総務部門を経て、2021年に人事部へ異動しました。現在はチームマネージャーとして、若手育成を中心とした教育・研修全般を担当しています。

異動を命じられた当初は、自分に務まるのだろうかという不安もありました。しかし実際に教育の仕事を始めると、多くの社員と関わりながら「どうすれば一人ひとりがもっと輝けるか」「組織のために何ができるか」を考えることに、大きなやりがいを感じるようになりました。特に若手社員が研修や現場を通じて成長し、表情や行動が変わっていく姿を間近で見られることは、この仕事ならではの醍醐味だと思っています。 

――グローリー様が一貫して大切にされている「人材育成の方針」や「変わらない価値観」について教えてください。

井上 時代や状況に応じて、教育の具体的な柱やテーマそのものは都度ブラッシュアップしていますが、根底にある変わらない軸は明確に存在します。それは、「自分たちで気づき、自分たちでどう行動すべきかを考える“自律した人材”を育てる」という姿勢です。

当社では以前から、単に業務知識を教えるのではなく、自分のキャリアや仕事への向き合い方を考える機会を大切にしてきました。

この「自律」や「思考」を重んじるカルチャーの背景には、当社のものづくり企業としてのアイデンティティが強く関係しています。グローリーは、唯一無二のコア技術をベースに、開発から製造、販売、そして保守メンテナンスまでを自社で一貫して提供しています。このビジネスモデルにおいて、高い品質を守り、世の中にない新しい価値を生み出し続けるためには、社員一人ひとりが高いプライドを持ち、妥協せずに思考を深め、仲間と協力して成し遂げるマインドが不可欠なのです。

当社の企業理念には「求める心」という言葉があります。社会により良いものを届けたいという飽くなき探究心と、それを支える自律の精神。これこそが、グローリーの人材育成における普遍的な柱となっています。  

若手社員の早期戦力化に向けた育成の課題

――普遍的な価値観がある一方で、2024年度には「教育体系の刷新」が行われたと伺いました。この変革の背景には、どのような組織課題があったのでしょうか。

井上 最大の契機は、2024年度からスタートした新しい人事制度の導入です。これまでの当社の人事制度は、どちらかといえば一律の年功序列型に近い要素が残っており、評価の中で昇格や処遇にも大きな差がつきにくい仕組みでした。

しかし、キャッシュレス化の進展や非現金ビジネスへのシフトなど、当社を取り巻く市場環境は急速に変化しています。こうした激しい時代を生き抜くためには、年齢や経験年数にかかわらず、高い成果を出した人や能力を発揮している人に適切なポジションやチャンスを早期に提供し、しっかりと報いる組織へと生まれ変わる必要がありました。

新制度では、評価軸を「業績評価」と「能力評価」の二本立てに切り分け、意欲と成果のある社員がよりスピーディにステップアップできる仕組みを整えました。そのためには、各等級で必要となる知識・スキルを明確化し適切な時期に教育を受けられる環境を整えること。また、各個人が自律して学ぶ環境を準備しました。

――かなり大きな転換ですね。その制度を実現するうえで、人材育成にはどのような課題があったのでしょうか。

井上 当時の当社の教育研修は、「体系的」とは言えない状態でした。新入社員研修こそ手厚く実施していましたが、その後のフォローは、キャリアの節目での単発の研修が中心でした。各等級で求められる知識やスキルが明確に定義されておらず、研修内容が現場のニーズに合っているのか、どのような効果を生んでいるのかも把握しづらい状態だったのです。

「制度のスピードを速めるのであれば、各等級に求められる具体的なスキルや知識を再定義し、より早いタイミングでインプット・育成する階層型体系に組み替えなければならない」。これが、今回のプロジェクトにおける最大のミッションでした。

――教育体系の刷新は2022年頃から着手されたそうですが、形にするまでの道のりはいかがでしたか?

井上 本当に、一朝一夕にはいかない大変な道のりでしたね(笑)。形になって2024年度にスタートするまで、丸2年近い時間をかけて検討を行いました。

一番苦労したのは、やはり求めるスキルの洗い出しと再定義の部分です。「一般的な各年代に必要なスキル」と、グローリーの現場(製造・開発・営業・保守など)で本当に必要とされる「実践的なスキル」の間には必ずギャップがあります。「この等級の若手に本当に必要な力は何なのか」「何をゴールとして育成すべきか」をめぐり、社内でも何度も議論を重ねました。

全体のバランスを見ながら、若手の育成ストーリーをゼロから組み立てていくプロセスは、主担当として大きなプレッシャーのかかるプロジェクトでしたが、その分、グローリーらしい育成体系を形にできたと感じています。

点から「線と面」へ。若手育成の土台となる「考える習慣」

――紆余曲折を経て完成した、新しい若手育成体系の特徴や、こだわったポイントについて教えてください。

井上 新体系の最大の特徴は、入社1年目(導入・フォロー)から2年目、3年目、そして「3級昇格者」までのステップを、階段方式の「一連の線」としてつなげた点にあります。

【グローリー様の研修制度体系】

かつては「点」で実施していた研修を、若手が一人前と言われる世代になるまで、継続的な育成を通じて基礎を固める体制へとシフトしました。
そして、コンテンツの内容として最も重視したのが、徹底的に自分で考える習慣をつけてもらうことです。

――「考える習慣」を、1年目から一貫して育もうとされた理由は何だったのでしょうか。

井上 今の若手世代は、検索すればすぐに答えが見つかる環境で育ってきました。そのため、仕事でも正解を求める傾向があり、答えがない状況では立ち止まってしまう場面も少なくありません。

しかし、実際のビジネスで直面するのは、正解のない課題ばかりです。若いうちから自分で考える習慣が身についていなければ、将来プロジェクトを任されたときに対応できなくなってしまいます。

だからこそ、1年目のフォロー研修から、あえて少し難易度の高い問いに向き合い、「なぜそうなるのか」「自分はどうしたいのか」を徹底的に考え抜くワークを取り入れました。研修で「答えのない問いに向き合う経験」を積み、それを現場での実践につなげていく。この思考の地力を若いうちに鍛えることが、何より重要だと考えています。

――「1日の非日常(研修)」を、残りの「364日という日常(現場の業務)」へと接続するために、人事としてどのような工夫をされていますか?

井上 人事と現場の管理職が同じ目線で若手を育てることを強く意識しています。人事から管理職には、「研修では何を目的に、どのような力を育てようとしているのか」を丁寧に共有し、現場でもその考え方を踏まえて関わってもらえるよう働きかけています。

現場によっては、まず決められた業務を正確にこなすことが求められる職種もあります。それでも、「少し考えさせる余地をつくる」「OJTの中で挑戦する機会を与える」といった関わりをお願いし、人事と現場が一体となって若手を育てる「面」でのフォロー体制を築いています。

育成体系を”ともに設計する”。伴走の中で築かれた信頼関係

――今回の育成体系の刷新にあたり、ファーストキャリアとはどのように課題を整理していったのでしょうか。

井上 ファーストキャリアさんとのお付き合いは、私が人事部へ異動する以前から続いています。当初は「研修内容をもっと良くしたい」という相談からスタートしました。しかし、対話を重ねる中で、「本当に見直すべきなのは個々の研修ではなく、若手育成全体の設計ではないか」という課題が見えてきたのです。

振り返ると、それまでは必要な研修を必要なタイミングで実施していたものの、人材像から逆算した一貫した育成のストーリーにはなっていませんでした。そこで、「グローリーが育てたい人材像」を起点に育成体系全体を見直していくことになりました。

――実際の企画・構築のプロセスにおいて、印象に残っていることはありますか?

井上 一番印象に残っているのは「どんな研修を実施するか」ではなく、「どんな人材を育てたいのか」というところから議論を始めたことです。例えば「3級昇格時点ではどのような状態になっていてほしいのか」「そのために3年目では何を経験しておくべきか」「では2年目では何を身につけるべきか」と、一つずつ逆算しながら整理していきました。

世の中には一般論としての育成論は数多くあります。でも、ファーストキャリアさんは、それをそのまま当てはめるのではなく、グローリーの現場ではどうあるべきかという視点で何度も議論してくださいました。

他社事例も豊富にお持ちですが、「他社ではこうしています」で終わることはありません。「グローリーならどう応用できるか」というところまで一緒に考えてくださったことがとても印象に残っています。

――長くご一緒いただく中で、ファーストキャリアとの関係性はどのように変わりましたか?

井上 最初は新入社員研修とフォロー研修という、限られた範囲でのご支援でした。しかし、一緒に育成体系を検討する中で、「この会社なら若手育成全体を安心して相談できる」という信頼感が生まれました。その結果として、現在では1年目から3年目、さらに3級昇格者研修まで、一連の育成をご支援いただいています。

私たちとしても、単に研修をお願いする会社という感覚ではありません。人事だけでは整理しきれない課題についても一緒に考え、方向性を言語化してくれる存在です。だからこそ、育成体系全体について安心して相談できるパートナーだと感じています。

講師のみなさんも、単に研修を担当するのではなく、私たちがどんな人材を育てようとしているのか、その背景や制度改定の意図まで理解したうえで登壇してくださっています。そのため、研修全体に一貫性があり、受講者にも自然とメッセージが伝わっていると感じています。

今の若手社員は、講師の言葉に説得力や一貫性がなければ、すぐに見抜いてしまいます。その点、ファーストキャリアの講師のみなさんは豊富な経験をもとに受講者を引き込み、受講者の反応を見ながら、その場に合った進め方をしてくださる。だからこそ、安心してお任せできているのだと思います。

若手に芽生えた「考える力」。グローリーが描くこれからの人材育成

――新たな教育体系を導入後、一定期間が経過しましたが、若手社員や組織にどのような変化が現れていますか?

井上 新卒向けの研修は、高卒から大学院卒まで多様な社員が毎年一斉に受講するため、個人のレベルやアウトプットにはばらつきがあります。しかし、「自分で考え、主体的に動かなければならない」という共通の意識は、若手全体に着実に浸透してきていると思います。

研修直後のアンケートでも、「ものすごく頭を使った」「疲れたけれど、勉強になった」という声が多く寄せられます。それだけ普段の業務以上に考え抜く経験ができたということだと思います。そうした経験を積んだ若手が現場に戻ることで、自ら考え、提案する姿勢が少しずつ組織にも広がり始めています。

何より嬉しいのは、1年目、2年目、3年目とフォロー研修で再会したときに、彼らの表情や発言、物事への向き合い方が着実に変わっていることですね。新制度が目指す「若いうちから考えて動ける自律型人材」が、育ち始めている手応えを感じています。

――それでは最後に、グローリー様が目指す今後の若手育成の展望と、ファーストキャリアに期待することをお聞かせください。

井上 今後、市場のデジタル化や変革がさらに加速していく中で、若手社員たちには目先の短いスパンだけでなく、より視野を広げて「10年後、20年後のグローリーを自分たちがどう引っ張っていくか」という長い時間軸で物事を捉えられるようになってほしいと考えています。

そのためにも、まずは現在ファーストキャリアさんと構築した「自分で考えて動く」という基礎力の土台を、より強固に、当たり前の文化として定着させていくことが最優先です。そのうえで、これからの時代に必要なトレンドや新たな知識を、最適なタイミングで肉付けしていきたいと思います。

私たちが目指す人材像や組織のありたい姿は、これからも変化していくでしょう。その変化に合わせて、「今、本当に必要な育成は何か」を一緒に考え続けてくれる存在であってほしいですね。研修を提供するだけではなく、組織や人材育成そのものを一緒に設計してくれるパートナーとして、今後も伴走していただけることを期待しています。