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COLUMN

2024.09.12

中堅リーダーの育成が、組織の未来を切り拓く ~組織を支えるメンバーをどう育てていくのか~

中堅リーダーの育成が、組織の未来を切り拓く ~組織を支えるメンバーをどう育てていくのか~
昨今、若手社員の育成が難しいという声を耳にすることが増えてきました。価値観や育ってきた時代背景の違いから、若手社員のマネジメントに悩む
現場管理職も少なくありません。そのため、多くの企業が若手向けの育成プログラムに力を入れています。一方で、社会人4年目以降の社員、
いわゆる「中堅リーダー」は、既に経験豊富と判断されているため、施策を打つ対象としての優先度を下げているケースが多く見受けられます。
しかし、組織の未来を考えると、中堅リーダーに注力して施策を打つことが重要なのではないでしょうか。
今回のコラムでは、中堅リーダーに対する育成の重要性と、そのための具体的な施策について探求していきます。

※本コラムでの「中堅リーダー」とは、社会人4年目以降~30代前半までの非管理職社員を指します。

なぜ中堅リーダーの育成が重要なのか?

結論から申し上げると、現場が抱える「中間管理職の業務負荷の高さ」と
「管理職になりたくない社員の増加、優秀な中堅リーダーの離脱問題」の解決に繋がるからだと考えています。

現場が抱える課題①:中間管理職の業務負荷の高さ

まず、中堅リーダーをマネジメントする、中間管理職の視点から考えていきたいと思います。パーソル総合研究所の調査によると、
近年、「業務量の増加」を感じている管理職は52.5%と過半数を占めています。同様の管理職負荷に関する調査が世間に数多くありますが、
その多くが「負荷の高さが近年になって増している」ということを表しています。※1.2 
また、変わりゆく下の世代の価値観・志向性への個別対応、ならびにハラスメントの糾弾可能性を抱えながら部下をマネジメントしないと
いけない状況が、中間管理職が抱える部下マネジメント全般の負荷を高めていると言われています。そんな中でも組織の成果を上げるために
奔走しないといけない、この状況を「無理ゲー」と呼んでしまうことにも頷けるのではないでしょうか。

弊社で行った、日系大手企業の中間管理職を対象にしたインタビュー調査でも、
「これまで通りのやり方や商品だけだと競合優位性を保てなくなってきたため、既存の売上を守りながら新しいことを試さないといけない。しかし自分だけで旗振りを行うのはリソース的にも限界があるため、リーダー(主任)のメンバーに手伝ってもらいたい」(40代・人材系企業)
「中堅リーダーには、自分が嫌われたとしても、後進のメンバーに対して言うべきことをフィードバックしてほしい」(40代・IT系企業)といった声が挙がっています。
世間の多くの中間管理職は中堅リーダーに対して、「組織の方向性に関する、メンバーとの橋渡し」「若手社員の育成」について
より期待せざるを得ない状況になっていると考えます。※3

現場が抱える問題②:管理職になりたくない社員の増加・優秀な中堅リーダーの離脱

続いて、リーダー本人の視点から考えていきます。

多くの社員は、「管理職になりたくない」

パーソル総合研究所の調査によると、対象である20代~30代の社員のうち「管理職になりたい」と積極的な昇進の姿勢を持つ人が約3割、
中立な姿勢が約2割、「そう思わない」と消極的な姿勢を持つ人が約5割という結果が示されています。この結果から、社員の多くが
「管理職になりたくない」と考えていると言えるでしょう。※4

「管理職になりたくない」と考える社員が増加した要因として、中間管理職が非常に大変な役割であるというイメージが強く、
魅力を感じていないことが挙げられます。表面的な「大変そうだ」「我々メンバーと比べて長い時間働いている」というイメージが
先行してしまい、実際の中間管理職の方が感じているやりがいや、仕事の奥深さが十分に伝わっていないことが考えられます。
さらに、管理職になることで、現場での直接的な業務から離れることや、従来の仕事に対するやりがいを失うことを懸念する
社員もいると言われています。昇進を拒否し、現状のポジションに留まることを選択することは、組織としては非常にもったいないと言えるでしょう。

意欲的な層は「キャリア不安」を抱え続けている

一方、昇進に積極的で、若手時代をがむしゃらに働いてきた中堅リーダーたちは、組織内で重要なポジションに位置していることでしょう。
しかし、今後のキャリアを考えたときに、「このままでよいのだろうか?」というキャリア不安を抱え続けています。

ここで「キャリア安全性」という概念をご紹介したいと思います。リクルートワークス研究所が実施した調査(※5)によると、
仕事の熱量の度合い=「ワーク・エンゲージメント」の高低と関係する要素として、「職場の心理的安全性」「職場のキャリア安全性」の2つが存在するとしています。

キャリア安全性は、以下のような性質を持つと言われています。

・時間視座、市場視座、比較視座の3つの俯瞰的な視点で、自身の現在・今後のキャリアが今の職場でどの程度持続的で安全な状態でいられると認識しているかを示す。

・ 「このまま所属する会社の仕事をしていても成長できないと感じる」(時間視座)
 「自分は別の会社や部署で通用しなくなるのではないかと感じる」(市場視座)
 「学生時代の友人・知人と比べて、差を付けられているように感じる」(比較視座)の3項目の逆数を用いて把握する。

・若手社員におけるワーク・エンゲージメントに対して、正の影響を有する。

・若手社員における職場の心理的安全性とは負の相関関係、もしくは無相関である

一言で言うと、「この会社で、自分自身の望むキャリアが得られそう」という期待が持てるか否か、ということです。終身雇用を前提とできず、
「逃げ切りの困難さ」を自覚しており、かつ徐々にライフイベントに直面する中堅リーダーにとっては、自分のキャリアについて
常に不安を抱えていると言えるでしょう。知らぬ間にエース社員が離脱してしまったというのはよく聞く話です。「この会社でキャリアが描けない」と
感じてしまった瞬間に見切りを付けて、次の会社に転職をするというのは、ある意味当然の行動と言えるのかもしれません。

しかし、所属している会社で望むキャリアがあるのにも関わらず、それを知らないまま見切りを付けてしまうのは、本人にとっても
非常にもったいないと言えるでしょう。また、組織としても意欲のある社員が離脱してしまうのは非常に痛手であり、その穴を埋める過程で
中間管理職が疲弊してしまい、それを見たほかのメンバーが中間管理職に魅力を感じなくなる、という負のスパイラルが発生してしまうことでしょう。
この問題を解決するためにも、意欲ある中堅リーダーを対象にした施策を考えることが重要です。

ここまで述べたように、中堅リーダーに対して施策を講じることは、現場が抱える「中間管理職の業務負荷の高さ」と
「管理職になりたくない社員の増加、優秀な中堅リーダーの離脱問題」の解決に繋がると考えます。では、中堅リーダーに向けて
どのような施策を打てばよいのでしょうか?

施策の方向性①:自己理解に主眼を置いたキャリア施策

まず、「自己理解に主眼を置いたキャリア施策」が有効であると考えます。中堅リーダーが自分のキャリアを考える機会に乏しい現状では、
「この会社で、こう立ち回れば自分のキャリアが開ける」というビジョンを持てるようにすることが重要です。

恐らく、本記事をご覧いただいているみなさまの企業は、人事制度で
様々なキャリアパスを歩むことができる状況を整備されていることと推察いたします。しかし、
「自分がどのようなキャリアを歩みたいのか」
「自分が何に向いているのか、どのようなポジションだと活躍可能性があるのか」が見えていないと、中々制度が機能しないものと考えます。
したがって、徹底した自己理解に焦点を当てたキャリア施策が必要なのではないでしょうか。自己理解に焦点を当てることで、
「自分がどんなキャリアを歩みたいのか」
「自分を活躍させるにはどうすればよいのか」が見えてきます。
結果、キャリアの方向性が明確になり、その方向に進んでいくために、目の前の業務に対しても新たな意義が見出されることでしょう。

世の中には様々なツールがあり、いろんな側面で自己理解を進めることができますが、弊社では「内的動機」を基軸にしたキャリア施策が有効であると考えています。
人が行動を起こすには、「動機」「価値観」「スキル・知識」の3要素が関係しているとされています。特に「価値観」「スキル・知識」は後天的に変化しやすいと言われている一方で、「動機」は先天的なものとして位置づけられています。
行動の出発点となり、自然に出てしまう行動の源泉である「動機」が何なのかを捉えたうえで、現在の環境で自分が活躍できるように
仕事に取り組んでいくことができれば、徐々に自分のキャリアの方向性が見えるでしょう。
※弊社では、内的動機を測定するアセスメントサーベイを用いたキャリア施策サービスを展開することが可能です。
 ご興味がございましたらお問い合わせください。

施策の方向性②:若手社員マネジメントの権限委譲

次に、「若手社員マネジメントの権限委譲」が重要であると考えます。管理職が忙しすぎるというイメージを持っている中堅リーダーに対して、
人材育成や若手社員のマネジメントを部分的に委譲することが効果的です。これにより、管理職の負担を軽減すると同時に、
中堅リーダーが管理職の役割を経験することで、実際の中間管理職の方が感じているやりがいや、仕事の奥深さを疑似体験することができます。
結果、「管理職、大変そうだけど自分もチャレンジしてみたいかも」という前向きな姿勢を持つ人が増えるかもしれません。

若手社員マネジメントの権限移譲の一環として、「OJTチームの組成」が挙げられます。一般的に、OJT制度と聞くと1年目社員1名に対して、
先輩社員が1名担当し、1年間伴走するというのが一般的かと思います。しかし、この「OJTチーム」というのは育成の対象を1年目に閉ざさず、
3年目までの若手社員まで広げたうえで、若手社員が戦力になるまでのプロセスをサポートするチームとして組成します。
チームでマネジメントについて考えることで、特定の中堅リーダーに負担が偏ることなく、若手社員マネジメントの権限を委譲することができます。
結果、中間管理職の負担が減り、業務に向き合える状態が実現し、中堅リーダーは中間管理職の要素を疑似体験することができます。
複数名が経験を積むことができるので、組織全体の育成力向上にも寄与することでしょう。

まとめ

中堅リーダーへの施策が、今後の組織の鍵を握っています。組織として中堅リーダーに対する支援を強化することで、優秀な人材の流出を防ぎ、現場の課題解決に繋がるとともに、組織全体のパフォーマンス向上が期待できます。

自分も中堅リーダーの当事者である中で、様々な葛藤と向き合いながら過ごしています。キャリア不安を抱えたまま過ごしていると、
目の前の業務に向き合えず、パフォーマンスが上がらないことに身を持って実感しています。若手社員に閉ざさず、中堅リーダーにも
焦点を当てた施策が展開された結果、より多くの人がキャリアに関して明るい未来を描くことを願っています。

1 パーソル総合研究所「中間管理職の就業負担に関する定量調査」 20191031日(木)
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/assets/middle-management.pdf

2 リクルートマネジメントソリューションズ「マネジメントに対する人事担当者と管理職層の意識調査2023年 高まる期待と負荷に向けて、実践への個別サポートが求められる」 2023925日 
https://www.recruit-ms.co.jp/issue/inquiry_report/0000001191/

3 弊社にて実施したインタビュー調査より(対象:日系大手企業の中間管理職3名)

4 パーソル総合研究所 「若手社員は管理職になりたくない」論を検討する 2023929
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/column/202309290001.html

※5 職場の「キャリア安全性」を考える リクルートワークス研究所 2022712
https://www.works-i.com/project/youth/solution/detail003.html