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INTERVIEW

2023.09.14

学生視点の内定辞退ストーリー ~私が内定を辞退した本当の理由~

学生視点の内定辞退ストーリー ~私が内定を辞退した本当の理由~
新卒採用の担当者にとって最も難しい問題の一つである「内定辞退」。将来会社を支えてくれるかもしれない優秀な人材をようやく確保できた!と思った矢先に辞退の連絡がきてがっかり…なんて経験がある方も多いのではないのでしょうか。
「第一志望と言っていたのに」「面接時はあんなに誠実に話してくれていたじゃないか…」と採用している側にとって、学生が辞退する理由は見えにくいことが多いと思います。
今回はキャリアアドバイザーとして多くの学生と接する筆者が、内定辞退した学生へのインタビューをもとにした事例を紹介し、そこから考えられる対策について考えていきます。

内定辞退エピソード① 明治学院大学4年 男性 Aさんの場合

金融や不動産、旅行やホテル業界など幅広く業界を見ていたAさん。飲食店でのバイト経験も長く、オンラインでインタビューした筆者にも伝わる人当たりのいい性格やコミュニケーション能力の高さからか、おおむね順調に就職活動を続けていました。
大学時代の趣味はスキーで、冬の間はゲレンデ近くの民宿に住み込みでバイトをするほどの打ち込みっぷり。その経験から旅行会社やホテル業界に特に興味を持っていました。

Aさんは6月までに4社から内々定を獲得。大手~中堅の不動産会社が2社、大手ホテルから1社、大手金融会社から1社と、志望している業界で満遍なく結果を残していました。
その時点での志望度は大手ホテルが第二志望、不動産、金融会社が第三志望群といった状態でした。
そして、第一志望として狙っている旅行会社の選考が6月後半に控えており、あとはその1社の選考に集中するだけ。内々定をもらっている第二志望以下の4社にも内定承諾の期限を延長してもらうよう交渉し、就活もいよいよラストスパート…というAさんにとって理想的な段取りでした。

しかし、6月中旬ごろにAさんのもとに届いたあるメールで状況は一変します。そのメールは第二志望の大手ホテルから届いたもので、中身を読んだAさんは目を疑いました。メールに書かれていたのは「内定を承諾するか辞退するか返事をしてほしい、期限は1週間」という内容。当初、大手ホテルからは7月中旬ごろまで内定承諾を待ってくれると聞いていただけに「こんな大事な連絡なのに急なメール一通なんだ、相談できる相手もいないし…」と会社に対する印象も少し悪くなったといいます。

Aさんにとってその大手ホテルは第二志望ではありましたがとても魅力的で、第一志望に落ちたら迷わず内定承諾しようと決めていた会社。
結局Aさんは、第一志望の会社を諦めることで後悔したくない、第三志望群の会社から内々定をもらっているという理由から、泣く泣く大手ホテルからの内々定を辞退することに決めました。

そして、臨んだ第一志望としていた旅行会社の選考ですが、2次面接で惜しくも不合格。「自分で決めたので後悔はないですが、もし大手ホテルの内々定が残っていればなぁって考えちゃいますね」と振り返りました。

インタビューに応じてくれたのは第一志望に落ちたすぐあとのこと。モヤモヤする結果に納得がいかず、就活を継続しているが、あまり身が入らないと話していたのが印象的です。
話を聞きながら「大手ホテルがもう少し承諾期間を伸ばしてくれていれば…」と思わずにはいられませんでした。

内定辞退エピソード② 早稲田大学4年 男性 Bさんの場合

大学ではサークルの代表を務めていたBさんですが、就活を始めたばかりの頃はあまり自信がなく、大手や名の知れた企業を受験するのは東大生やコミュニケーション能力が高い学生ばかりで、自分は場違いなのではと思っていたそうです。
しかし、大学3年の夏ごろから受け始めたインターン選考でのグループディスカッションや面接で成果を残せたことで「案外自分は就活が得意なのかもしれない」と自信を深めていきました。
5月中旬ごろには、大手半導体製造メーカーの会社と大手金融会社から内々定を得ることができ、順調に就活を進めました。

Bさんにとって最大の悩みは内々定をもらった後のこと。内々定をもらえた2社は元々志望度が高く、仕事内容や待遇面などBさんにとっては総合的に見ても甲乙つけがたい会社。就活を始めたころの志望業界が金融だったため、金融会社のほうが若干志望度が高い程度でした。
そのため、Bさんは最終面接を終えた後、両社の人事担当者と何度も面談を重ねました。説明会では聞ききれなかった入社後の働き方やキャリアステップの詳細など、人事と1対1で事細かに聞くことができ、働くイメージも具体的に想像することができたといいます。

中でもBさんの印象に残っているのが、半導体メーカーの人事担当者に対して、もう1社金融業界の会社と悩んでいると打ち明けた時でした。

人事担当からは社会人としての目線で両社の強みについて説明を受けました。「もし転職をするなら向こうよりもうちの方が選択肢は広がる」など、2社を比較した際の自社の強みについてだけでなく、「うちは地方勤務の可能性もあるけど、向こうは確実に都内で働くことができる」「事業の安定性では敵わない」など、自社の弱みについても正直に話してくれたと言います。

「人事としてというより、頼りになる先輩から話を聞いている感覚だった」とBさんは人事担当者に信頼を寄せるようになりました。
就活軸として社員を大事にする会社を選びたいと思っていたBさんは半導体メーカーへの入社を決意。結果的に当初の志望度が逆転する形になりました。

自社の強みだけでなく、あえて弱みとなる部分を学生に提示することで功を奏した事例と言えるでしょう。

内定辞退エピソード③ 立教大学4年 女性 Cさんの場合

人の生活を支えたいという就活軸をもっていたCさんは主にインフラ業界を志望していました。インターンシップに参加していたインフラ系の会社の早期選考を受け、早々と3月に内々定を獲得。
しかし、まだ就活する時間に猶予もあり納得して企業選びをしたいと考え、就活を継続することを決めました。

内定承諾の期限を伸ばしてもらえるか、インフラ会社に相談したところ、「納得するまで就活を続けてほしい、6月や7月になっても構わない」と快く受け入れてくれたそうです。
Cさんは「本当に社員を大切にしてくれる会社なのだと感じた」と、就活に集中することができました。

その後も内々定ももらえたインフラ会社から決して承諾を迫られることなく、むしろ就活をサポートするような連絡が定期的にありました。
また、入社後の不安を解消できるような話も聞くことができ、時には自宅にまで足を運んでもらうこともあったといいます。

「ちゃんと向き合ってもらっているという感覚があった。入社することになっても全く抵抗はないし、むしろ入りたいという気持ちに変わっていった」と志望度も上がったといいます。

しかし、Cさんは結果として、そのインフラ会社の内々定を断ることになりました。その理由はCさんがこだわっていた転勤の有無でした。
内々定を得ていたインフラ会社は事業所が東日本に展開しているため、必ず転勤が発生するキャリアステップ。Cさんは地元の関東から離れたくないと考えていたため、転勤がない、もしくは転勤をしても首都圏で働ける会社を探していました。
インフラ会社から内々定を受けた後は、その会社と同等以上の条件で、さらに転勤の条件に合致する会社に絞って就活を継続。見事、その条件に合致する会社から内々定を得ることができたそうです。

Cさんは自分に向き合ってくれたインフラ会社に対しては恩を感じており、辞退することに申し訳ない気持ちもあったそうです。
会社に対する信頼や志望度が上がりましたが「転勤は自分の中で譲れない条件だったので、心苦しい気持ちはありましたが、断るしかありませんでした」。

結局転勤の一点だけがネックとなり、最後は内定辞退する決断に至ったそうです。
このように人事担当が学生に寄り添ったとしても、必ずしもいい結果にならないというのが、新卒採用の難しい点でもあります。

内定辞退を減らすためには

ここまで、内定辞退を決断した3人の学生について話してきました。学生それぞれに考えや思いがあり、一筋縄ではいかない難しさを改めて感じる内容だったのではないでしょうか。
インタビューをした学生は他にもいますので、ここからはその他の学生の話も交えながら、どうすれば内定辞退率をさげることができるのかについて考えていきます。

内定承諾期間は柔軟に対応する

まず挙げられることは、内定承諾についてはできるだけ学生の希望に合わせることが有効、ということです。
内々定を出した学生が他所へ行かないために、できるだけ早く承諾してほしいという気持ちもわかりますが、逆効果になることも少なくありません。

今回挙げた学生の他にも、内定承諾期間が短いことに不満を感じ、あまり印象が良くないと話す学生が多く見受けられます。また、内定承諾に法的な拘束力がないことを確認したうえで、承諾した後に辞退することを考えている学生もいました。
採用担当の方からすると耳をふさぎたくなるような話ですが、学生にも「選ぶ側」としての意識がありますので、仕方ない部分もあるかと思います。

承諾期間を長くすることはリスクもあり労力も余分にかかりますが、離脱率を下げる方法としては有効な手段になるかもしれません。

学生の重要とすることを探り当てる

内定承諾期間を伸ばすことが企業側の対応として挙げられていましたが、内々定を出した学生にできる限り寄り添うことも大切です。
ただ今回の例のように、寄り添ったからと言って必ずしもいい結果になるとは限りません。学生にとって入社を決定するにあたり大事なポイントを確認するとともに、それに対して真摯に向き合うことが重要でしょう。

まだ社会に出たことのない学生は働くことに対するイメージが沸かず、不安を感じていることも少なくありません。学生との接点を最大限活かしきり、入社の意思醸成を形成できることを願っています。

まとめ

ここまで実際に内定辞退した学生の話や学生の内定辞退を防ぐ方法について話してきました。学生にもそれぞれ考えや事情があるということを理解することが、採用活動において大切な要素になるかもしれません。
採用担当にとって内定辞退は頭を悩ませる問題ではありますが、この記事がその一助になれば幸いです。