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COLUMN

2023.10.05

社会人3年目の私が成人発達理論に出会った話

社会人3年目の私が成人発達理論に出会った話
入社して3年目に入ると、担当業務にも慣れ、ある程度の仕事を任されるようになってきます。同時に、一人前として成果を出すことを期待され始め、社会人として程よいプレッシャーを感じる時期かと思います。
かくいう私も、ファーストキャリアに新卒として2021年に入社して2年半が経ちましたが、年々高まる業務目標に対して、思うように成果が出せずに悩んでおりました。
本記事では、社会人3年目の私が、お客様にしっかりと価値を提供するために、どのように自己成長すべきか探っていた中で出会った「成長発達理論」について感じたポイントと、自ら陥っていた負のループから抜け出し、状況を変えることができた理由について書いていきたいと思います。

きっかけは「思ったような成果が出ないもどかしさ」

現在、私は営業としてお客様の人材課題や組織課題に対して研修やコンサルティング等のサービスを提供しておりますが、社会人3年目を迎えて営業目標の数字も上がり、自身の能力不足を痛感しながら仕事に向き合う日々を過ごしていました。
そのような中で、お客様の組織開発や人材育成に関わる中で、「そもそも人が育つためには何が必要なのか」ということを考えるようになり、様々な書籍を読む中で出会ったのが「成人発達理論」です。

これは「成長のメカニズム」と「成長のための適切なプロセス」に関する社会人のための教科書です。お客様へ本質的な価値を届けるために「人が育つこと」に対する知識の幅を広げていきたいという想いと自己成長したいという気持ちが、成人発達理論を学ぶきっかけとなりました。

しかし、成人発達理論を知れば知るほど、等身大の自分自身に刺さること刺さること。今の自分に必要なことは自己に向き合うことだと気づかされました。今では「成人発達理論」との出会いをきっかけに、仕事に対する向き合い方や行動が変わり、以前よりワクワクした気持ちで仕事に取り組むことができるようになりした。

いま、人材開発領域で「成人発達理論」が重要だと考えた理由

成人発達理論の活用が有益と考えている理由として以下の2点が挙げられます

・  人口減少および少子高齢化が進む現代において、新しい人材確保が難しくなっている点から企業は既存の社員の育成に力を入れる必要性があるから

・  激動する社会の変化(VUCA)の中で、組織や環境に依存しない自律的な人材が求められるから

そもそも「成人発達理論」とは何か

成人発達理論とは、大人の成長を考える理論のことを指します。これまで多くの学者が研究を重ねてきておりますが、中でも権威とされているハーバード大学教育大学院教授ロバート・キーガン氏の「器の成長モデル」は非常に有名です。近年はさらにキーガンの成長発達理論から派生した理論も多く存在します。

一方で、人の成長を考える際には上記で示した「器(人間性や度量)」だけではなく、具体的な「能力(スキル)」の成長の側面もあります。これら2つは互いに独立しながら、相互に影響を与えあっています。能力の成長に関しては、カートフィッシャーの理論が有名です。

今回は先に述べた私自身の「能力不足」を課題としていたため、カートフィッシャーの「能力の成長」についてお伝えできればと思います。

成人発達理論のポイントは「能力発揮のための2つの要因」

能力の成長を考える際には2つの要因を理解する必要があります。

1つ目は環境依存性です。いわゆる、人は環境が変わると能力が発揮できないことがあるということです。

例えば、前の職場では、リーダーシップを発揮し成果を出していたが、転職先では期待される成果が発揮できないといったケースです。発揮していた能力やパフォーマンスが、実は環境に依存していたことが要因になっていることはよくあることでしょう。逆に言えば、環境が変わることで発揮できる能力が変化することもあるといえます。したがって、能力は置かれている環境等の特定の状況によって磨かれ、その状況の中で発揮されるものであるため、能力の成長を考えるためには取り巻く環境の種類と特性を見極めることが重要となります。

私の場合は、担当している顧客は大きく変わることはありませんでしたが、所属チームは変わりました。チームが変われば方針や働く人もこれまでとは変わります。そう考えた際、今まで発揮できていた能力は、「一緒に働いていた人」や「チーム」に依存していた部分があったといえそうです。

2つ目は課題依存性です。課題依存性とは、置かれている状況(環境)は同じでも、「取り組んでいる課題」次第で本人の能力をうまく発揮することができないことを指します。例えば、プロジェクトのリーダーという役割でも「社員のモチベーションを高めるプロジェクト」と、「会社全体の生産性を高めるプロジェクト」では異なる種類の能力とレベルが求められるはずです。

自分のケースに置き換えると、担当する顧客は同様であったとしても、目標数字が上がるという明確で新しい課題が組織より与えらました。また、営業以外のOJTリーダーとして後輩指導の役割を付与されたことで、求められる能力やそのレベルが変わり、能力不足を意識するようになっていたと思うのです。

能力はどのように成長するのか

「成人発達理論」では、能力は具体的な課題を通じて成長していくという特徴を持っていると言われます。そのため、ある特定の能力を伸ばしたい場合には、その能力と密接に関係した具体的な課題に取り組むことは必ず求められるようです。ビジネスにおいては、分かりやすくスマートに話したい場合はシャドーイングをする。プレゼン力を高めたい場合、プレゼンのどのプロセスで課題があるのか分析し、明確になった課題に対して必要なスキル学ぶ、といった具合に、求められる能力や具体的な課題に対して愚直に取り組むことが成長には必須です。

一見、当たり前のことですが、私にとっては、耳が痛い話でした。お客様の期待に応えるために目の前の課題に対してどの程度行動できていたか。例えば、「営業として自社サービスをお客様にわかりやすく伝えるための行動」「信頼関係を築くためにお客様を理解するための行動」等、振り返ると当たり前のことが当たり前にできていない時もありました。目の前の課題に愚直に取り組めていないことの積み重ねが現状につながってるように感じます。

思ってたこと違ったこと① 「一人前になること」への誤解

私は入社当時から、「3年目で一人前になること」を目標に掲げていました。一人前とは「1人でお客様への価値を最大化できる能力を身につけること」だと解釈していました。しかし、現実では難易度の高いテーマであっても、自分が決めた一人前志向が邪魔をして周囲への相談をしなくなっていました。その状況が続くことで、タスクを抱え込んでしまい 初動は遅れて、タスクに追われる状況が続くという負のサイクルに入りました。結果として、お客様への納期がギリギリになり、「もっと早く周りを頼れば良いものにすることができたのではないか」と反省することもありました。

成人発達理論において一人前は「個人で発揮する成果のレベル(個人成果)」と「人を巻き込み発揮する成果のレベル(巻き込み成果)」の2つの成果で定義されるようです。
ここでいう「巻き込み成果」とは人の支援を受けながら発揮できる能力を指します。一方で、「個人成果」とは自分一人だけで発揮できる能力を指します。(私が先述した一人前の定義はこれに該当するように思います。)

上記2つの成果にはギャップがあります。個人成果は緩やかに上がる一方で、巻き込み成果は大幅に上がるため、より高いレベルの能力を発揮するためには周囲からの支援が不可欠になるのです。私が描いていた一人前のイメージとは「一人でできる能力を高めること」でした。できないことの中からサポートがあればできるかもしれないことを抽出し、適切なサポートを自ら取りに行くことが本来とるべき行動であったということです。私は、 一人前の解釈を誤ったため(個人成果でしか考えていないため)、根本的な考え方から見直すきっかけになりました。

つまり、これまでの私は、求められる能力は上がっているが、他者から受ける支援の量を減らしていたため、自身の発揮できる能力が狭まる結果になったのではないかと思います。

思ってたこと違ったこと② 「効率的に成長したい」の罠

とはいえ、目の前の課題に向き合いつつ、多くの人の支援を受けながらも、最短距離で成長したいという、わがままな自分もいました。「今どきの若者に多い価値観」等と言われますが、自分自身をあらためて振り返ると心あたりがありました。

例えば、上司から「行動量が少ない」と指摘されることが度々ありました。今思うと前述した「一人前への誤解」と通じる点でもありますが、行動する前に「今からやろうとしていることは、ベストな選択肢なのか」と考えるクセがあり、一歩踏み出すことが遅れていたと感じます。目標達成まで「できるだけ最短距離を目指したい」という自分へ矢印が向いた考え方が、お客様へ価値を届ける機会、自身の成長機会のどちらも損失していただと思ったのです。

常に自覚するようになったこと2つ

「半分納期と60%のクオリティ」で周囲のリソースを最大限活用する

先述した、「一人前の誤解」の気づきから、足元では仕事に丁寧に取り組みながら、半分の納期で60%のクオリティで仕上げることが出来るように取り組んでおります。場合によっては50%、40%の時もあります。重視しているのは自身の個人成果を把握した上で、リソースは最大限使うこと。その結果、自身の能力が最大限発揮できるプロセスを踏むことができるのではないかと思います。

「知識不足と言語化の鍛錬不足」に向き合う

もう1つ、成人発達理論の中で気づかされた点は、「取り組むことに本当に意味があるのかを判断しようとしない」という点です。カート・フィッシャーによると自分自身の能力を上げるためには、「圧倒的な知識量と言語化の鍛錬が必要不可欠である」とありました。自身の成長幅が、顧客への価値提供の量に比例するとした場合、目の前のお客様に対して価値を届けるためには、自身が誰よりもインプットし、言語化(アウトプット)の場を増やすことが最短距離だということです。

今回のブログ作成の機会は私にとって、まさに新しい知識を補いながら言語化する機会だったとも感じます。何かに没入して知識を補い、言語化することでその分野についてさらに好きになり、興味の幅も広がった気がします。小さな成功体験が興味を生み、更なる学習欲求を生むような正のサイクルのきっかけになったように感じます。このことに気づいてから「この選択が適切か否か、現時点で効率よく判断しようすること自体がもったいない」と感じるようにもなりました。

日頃から向き合っている「研修」においても、能力開発のためには「現場での実践(アウトプット)」が重視されています。育成する側としては、成長のメカニズムを理解した上で研修を設計し、その人の環境や課題に沿った適切な「プロセス」を踏まえた支援が求められると思います。その中でも、私が特に重要と考えるのは、受講者が研修を通じて「実践で活かそうと思う」の動機付けや、学びの実践を継続できるように周囲からのフィードバックを受けやすい環境設定を行うことにより、小さな成功体験(心が動く経験)を積み重ねていくことだと感じます。

 

成人発達理論に関するキーワード

ダイナミックスキル理論・・・能力はどのようなプロセスとメカニズムで成長していくのか説明するもの。私たちの能力は多様な要因によってダイナミックに成長していくものである。それは静的なプロセスではなく、動的なプロセスによってもたらされるもの、成長は偶発ではなかく必然に近づけることができるのではないだろうか。

発達の網の目・・・様々な能力は相互に関係しながら成長していくということ。例えば文章を読むスキルには文法を理解するスキルや、漢字の意味をつかむ力が密接に関係しあっている

能力の環境依存性・・・能力は環境や置かれている状況が変われば、発揮できる種類やレベルは変わること

能力の課題依存性・・・能力は環境が同じでも化されている役割や具体的な課題が変われば、発揮できるレベルや種類が変わるということ

能力の変動性・・・能力は変動性を考慮する必要がある。変動性(自分で環境や課題に変化を起こす行動特性のこと)は成長の潤滑油のような存在である。同じようにノイズ(自分ではコントロールできない変化)も成長には必要である。ただ、上記は認識していることが大事で、ノイズを認識しないまま実践や改善に向き合ったところで、成長には直接関係しないことがある

サブ能力・・・能力を細分化したものである。例えばリーダーシップという能力は、visionメイキング力、課題解決力、コミュケーション能力など、細分化したサブ能力に分解する必要がある。上記汎用性の高い能力が求められるが、まずは具体的な状況や場面に沿ってどのような能力が自身の課題に当たるのか、理解することが肝要である

巻き込み成果・・・誰かの支援を受けながら、発揮できる最大限の能力レベルのことを指す。他人の支援が必要なことは子供だという認識が多いが、能力のレベルが上がるほど、巻き込み成果と個人成果のギャップは大きくなる、故に関係構築をシナガラ業務を前に進める力は非常に重要である

個人成果・・・一人で発揮できる最大限の能力レベルである。誰からの支援も受けず単独で遂行できる能力のことを指す。巻き込み成果と比較して、直線的な成長に線を描いているように見えるが、短期的な視点でみると右肩上がりではなかく、上下しながら成長していく

発達包囲網・・・巻き込み成果と個人成果のギャップを指す。年齢が上がるほど上記のギャップは広がるため、他人からの支援がより必要になる。より高度な能力を発揮するためには他者からの支援に基づいて巻き込み成果を発揮していく実践を行うことが重要である

参考文献

・【成人発達理論による能力の成長・ダイナミックスキル理論の実践的活用法】 日本能率協会マネジメントセンター 加藤洋平(2022)
・【成人発達理論で分かった!人も組織も簡単には変われないワケ】 ダイヤモンドオンライン(2021)
 https://diamond.jp/articles/-/263829?page=2
・【成人発達理論で解き明かす若手の挑戦と成長~ONE JAPAN 50社1200人の若手が殻を破り自ら動きはじめたのはなぜだろう?】(2019)
 https://rc.persol-group.co.jp/learning/stratified/column/201902200048.html