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2023.01.31

Z世代新入社員受け入れへ 押さえておきたい事前準備~現場オンボーディング編~

Z世代新入社員受け入れへ 押さえておきたい事前準備~現場オンボーディング編~
社員育成への直接施策は、OJT、OFF-JT、自己啓発の3つと言われています。今回は新入社員の受け入れにあたって押さえておきたい事前準備として、配属後のOJTに役立つヒントをお伝えします。昨今はOJTとオンボーディングが同義として語られることも増えてきましたが、今回は新入社員の職場等への適応をオンボーディングとし、OJTはその構成要素のうちの1つという位置づけでお話しさせていただきます。

毎年新入社員が配属される部署であっても育成課題は出てくるものですし、新入社員との関係構築や本人に合わせた育成方法の模索は多かれ少なかれ発生します。しかし、オンボーディング担当者やOJTトレーナーがそれを丸抱えしているケースも少なくありません。現場でのスムーズなオンボーディングを実現するため、人事部門との連携や会社としての支援も必要な場合もあるでしょう。人事ご担当の方には現場でのスムーズな育成や早期戦力化に向けたバックアップのポイントとして。新入社員が配属される部署の皆様においては、受け入れや育成のための準備としてお読みいただけましたら幸いです。

事前準備その1|新入社員のオンボーディングプロセスを把握しておく

オンボーディングを一言で表すなら“適応”でしょう。新入社員は入社後様々な領域で適応していかなければなりません。この適応がうまく行われない場合、新入社員は職場や仕事へのミスマッチを感じ、モチベーションやパフォーマンスの低下を招いてしまう可能性があります。早期戦力化、離職予防の両面から新入社員の適応問題には真摯に対処していかないといけません。まずは配属後のオンボーディングがどのように成されるかを知っておきましょう。オンボーディングは以下の3つの領域に分かれると考えられています。

1.職場への適応

新入社員が職場に所属するにあたって、本人の心理的安全性が確保されながら、職場そのもの、同僚、上司などと、メンバーとして双方で了解が得られている状態を指します。職場への適応がなされている状態として、新入社員自身が、組織にいることで居心地の悪さを感じていないことであり、いわゆる職場に馴染んでいることがあげられます。この職場への適応でつまずくと、その後に控える様々な適応に困難をきたすことは想像に難くないでしょう。

2.業務への適応

新入社員は入社・配属後、組織ルール、業務フロー、専門用語等についての知識を獲得していくこととなり、業務への適応はこれにあたります。仕事への理解が深まっていくと、周囲から見ても違和感のない行動に変化していく様子が見て取れるでしょう。会社生活上で不明な点を明らかにするため、新入社員自らが必要なものを必要なタイミングで速やかに調べる、上位者を含んだ他者に聞くことができるなど、「会社生活を送るうえで必要な情報に自らアクセスできる」ことも業務適応を実現する上で重要です。

3.目標・成果への適応

新入社員に明示されている成果目標はもちろん、周囲からの暗黙的な期待に対し応えていく過程を指します。この目標・成果への適応は新入社員自身が組織の目指す方向性や自身に与えられている目標を具体的に理解していることが必要です。また、目標達成に向けた本人の行動について、組織視点で違和感がないことも大切で、行動や成果に対し双方ストレスがない状態がひとまずの目指すべきラインとなるでしょう。


新入社員は以上のように様々な適応をしていくこととなりますが、すべての適応がスムーズに実現されることは稀で、多かれ少なかれスタックしながら進捗することがほとんどです。特に目標・成果への適応フェーズに進むにつれ、本人の思考や行動に変化を求められることが多くなるためつまずく機会も増加します。
では、新入社員の受け入れ側はどのようなことに留意する必要があるのでしょう。次は無意識におこなってしまいがちなOJTの問題点や、受け入れ時に陥りがちな点を改めて認識しておきましょう。

事前準備その2|育成で陥りがちなケースを把握しておく

新入社員の受け入れで実施される施策の定番は、特定の先輩社員が仕事を通して新入社員を育てるOJTです。専門知識を身に着けること、一人で仕事を回せるようになることなど、部署によって目標は異なるものの、思考・行動について細かく丁寧に指導し、二人三脚で仕事の習得を目指す姿はみなさん自身にも見慣れた光景でしょう。しかし、この育成方法は組織内の上下関係を前提に、新入社員を下積みとして扱うイメージとなります。新入社員は言われたことをとにかくこなし、覚え、上位者にとって好ましい振る舞いを身に着けていくことを目指します。長年、日本の育成現場で実施されてきたこの伝統的OJTは、多くの新入社員を育ててきた実績がある一方で、注意すべき点もあるのです。組織文化の中で行われるオンボーディングは自然とこの伝統的OJTが行われていることが多いため、次年度新入社員を受け入れにあたっての要点を押さえておきましょう。

まず、OJTの計画立案場面で陥りがちな点です。これまでの伝統的OJTでは教える内容や、OJT担当社員、期間など計画を立てて臨むことが一般的です。しかしその内容はある程度固定化されたものになります。これは育成計画に盛り込まれる習得要素は、部署の仕事そのものが大きく変わらない以上、頻繁に修正の必要がないため代り映えのない内容になりがちです。仮に育成計画を新規で作成するといっても手間がかかります。先輩社員から継承されたファイルを引っ張り出し、必要な部分だけを書き換えてOJTの準備を効率的に済ませてしまうことはどこの職場でも起きていることでしょう。

また、計画を立てる際には新入社員のパーソナリティが考慮されることが少ないことも問題です。不思議なことに当事者である新入社員の情報が乏しい状態で育成計画を作ることが多いのです。人事部門からの採用時の評価情報や研修等で得られた人材情報が連携されることも少なく、そもそも連携以前に「育成に有益な人材情報とはなにか」を人事と現場とですり合わせることができている職場は稀です。そのため新入社員の人となりに合わせた計画ではなく、どうしても組織文脈が優先された型通りの計画づくりとなってしまいます。このことは育成でつまずく要因となる可能性があり、後述で詳しく考察していきましょう。

次に運用フェーズでの注意点です。上記のように組織文脈が優先された計画でOJTに臨むことは、新入社員本人の都合が考慮されない、型にはめる育成になりやすいことはご理解いただけたでしょう。オンボーディングやOJTの運用は人と人で行うため様々な問題が起こります。「思った通りに成長しない」「失敗を恐れすぎる」などです。これらがうまく是正されない要因の1つに、属人性があります。

育てる側は事前に計画されたカリキュラムを元に新入社員に必要なスキルを習得させることが主眼となります。役割を与えられた指導担当者が下位者に業務知識や仕事の進め方を伝授する中で、新入社員に合わせて教え方を変えるといった工夫は属人的になりがちです。業務経験が豊富な指導担当であっても育成の知見が豊富とは限りませんし、育成に対するモチベーションも様々です。新入社員のタイプも様々なはずですが、伝統的OJTはいわば企業文脈であり指導担当者文脈のオンボーディングです。そこに順応していけるかどうかは運と人しだい。結果的にうまく適合した人間だけが組織で生き残っていくことになります。これは新卒一括・大量採用時代の育成手法であり、労働市場や働く価値観が変化した現在、既存の育成そのものにも変化を迫られているのです。

この属人性の問題は新入社員の自律性や主体性が育ちづらくなる要因になる場合があります。本人の日々の行動に指導担当者が良かれと思い、箸の上げ下げまで口を出してしまうと、新入社員は委縮し指導担当者に注意されないよう防衛的な行動をとるようになります。過去をさかのぼり「言われたことはそつなくできるが主体性に欠ける」といった状況に陥りがちである場合はOJTを複眼的に点検してみてもよいでしょう。例えば主体性は仕事の中に本人の裁量がないと発揮することができません。いわゆる仕事の余白があるからこそ新入社員も自分で考え、工夫し、行動するといった主体性が発揮できるのですが、細かく丁寧な指導は、本人の仕事の余白を指導担当者が先回りして埋めてしまうことになりかねません。経験の多い指導担当者からすると新入社員は当然未熟に感じる部分も多いでしょう。しかし彼らも大学時代までに様々な経験をし、人と関わり、自社の選考を通過してきた大人達です。口を出しすぎる、あれこれと粗が気になってしまうタイプの指導担当の方にはそれをご理解いただいた上で指導方法をブラッシュアップいただければと考えています。

事前準備その3|新入社員のパーソナリティと指導担当者のパーソナリティを把握する

「近年の新入社員の傾向を知りたい」といったご要望は、当社に毎年多く寄せられるお問い合わせでもあります。これは多くの教育ベンダーが毎年の新入社員に対して調査を行い、様々なキャッチコピーをつけレポートを出してきたことによる風物詩的側面もあり、レポートの多くが新入社員の傾向や特徴について言及するものがほとんどです。読み手である人事や現場担当者は、新入社員の人物像や前年との違いを知ることによる受け入れ不安の解消や、育成に際しての予測に活用されていることでしょう。

重要なのはこの「傾向」がどの程度育成に寄与できのるかという点ですが、まず世に出ている「傾向」はレッテルにつながりやすい側面があります。「今年の新人は〇〇なタイプだから」とひとくくりにして語ってしまうと、世代間のギャップを広げかねませんので、扱い方には注意が必要です。たま、自社に入社する新入社員の個性や特性とはまったくの別物であることも認識しておく必要があります。そのため、世に出回る「来年の新入社員の特徴は~」といった情報をベースにして育成を組み立てたり、接し方を想定したりすることは有効とはいえないでしょう。育成の足場とすべき情報は新入社員当人以外にありませんし、そのためには採用~内定、入社そして配属後といった、新入社員とのタッチポイント中で本人のパーソナリティ、価値観を発見・蓄積していくしかないのです。

※オンボーディングに有効な本人のパーソナリティの掴み方については当社の2022年度新入社員レポート(こちら)をご確認ください

新入社員側のパーソナリティに目が向きがちですが、もう一方の当事者、即ち我々受け入れ側自身のパーソナリティも最後に再確認しておきましょう。「事前準備その2」で述べたように育成の諸問題の多くは人に起因します。オンボーディング担当者および指導担当者が自身のどのような振る舞いや接し方、指導方法を取りがちか、確認しておきましょう。

あなたのコミュニケーションスタイルは・・・

受動的コミュニケーションスタイルか、能動的コミュニケーションスタイルか

論理的コミュニケーションスタイルか、直感的コミュニケーションスタイルか

あなたの指導スタイルは・・・

1から丁寧に指導していくスタイルか、ある程度任せるスタイルか

短所を埋めていきたいタイプか、長所を伸ばしたいタイプか

あなたの思考タイプは・・・

成果を大事にしたいタイプか、プロセスを大事にしたいタイプか

着手する前にしっかりと計画をするタイプか、行動しながら考えるタイプか

例えば上記のような特徴は、人対人のオンボーディング、育成を行っていくにあたり双方に影響を及ぼす個性であり、新入社員と受け入れ側が自身のスタイルに固執してしまうと、いずれ無理が生じオンボーディングの3つの適応においてネガティブに働いてしまうでしょう。大切なのは相手のタイプ、自分のタイプを冷静に理解しておくことです。仮に真逆でもそこはあまり問題ではありません。相手の状況を正しくつかめないこと、相手に合わせ指導を臨機応変に修正できないことが問題となるのです。

今回の記事では、オンボーディングプロセスを正しくご理解いただくこと。そして伝統的なOJTで注意しなければならないこと。受け入れのフェーズで起点となる属人性の問題。最後に正しいパーソナリティの把握とその活かし方についてお伝えをさせていただきました。オンボーディングについてはまだまだ多くの変数が存在します。貴社におけるスムーズなオンボーディングと、配属される新入社員の1日も早いコアメンバーへの成長を願うとともに、本記事が何かの参考となれば幸いでございます。