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2023.09.06
新卒売り手市場は継続?″Z世代″である令和の学生は会社になにを求めるのか
この記事ではキャリアアドバイザーとして多くのZ世代である令和の学生と接してきた筆者が、面談で感じた彼らの特徴や価値観をもとに、彼らが企業に求めているものは何か、どういった企業に魅力を感じるのかについて話していきます 。貴社の採用活動や、入社後のオンボーディング設計のご参考になれば幸いです。
※リクルートワークス「第40回 ワークス大卒求人倍率調査(2024卒)」より
Z世代である令和の就活生ならではの特徴、価値観とは
Z世代とは
Z世代とは、一般的に1990年代後半から2012年ごろに生まれた年代を指し、2023年現在で10代後半から20代前半の世代にあたります。これから新卒採用する年代はまさに「Z世代ど真ん中」といえる年代でしょう。
生まれたときからインターネットが身近にあったZ世代はパソコン、スマートフォンなどのデバイスを当たり前に使うことはもちろん、SNSの利用も活発でソーシャル・ネイティブとも言われます。日常では出会わない他者の価値観や意見に触れやすく、これまでより多様な価値観を持っていると考えられています。
令和の就活世代の当たり前 1.現実主義
令和の学生はバブル崩壊後に誕生したこともあり、不安定な経済状況下に生まれ育ってきました。また、幼少期に2008年のリーマンショックを経て、将来に対しての期待感が低い人も多い印象です。夢や理想を追い求めるよりも、現実的な考え方をする傾向にあり、コストパフォーマンスや効率をより重視する考え方が広まっています。
これまでに面談をした学生も、大きな報酬よりも身の丈にあった仕事、バランスの取れた働き方、ベンチャーよりも安定した企業といった志向性を持つ学生が一般的でした。また、就職活動の進め方自体も特徴的で、より効率よく就活を進めようとする姿勢が印象的でした。たとえば、採用ホームページに掲載されている動画を倍速で見たり、情報収集は幅広く行うものの本選考に進む企業数を極力少なくするために早くから業界を絞ったりするなどが挙げられます。できるだけ時間や労力をかけずに内定を獲得しようとする学生が少なくないのです。
令和の就活世代の当たり前 2.横のつながり、仲間意識が強い
これまでの上下関係を大事にしてきた世代と比べ、令和の就活世代は特に横のつながりを大切にする傾向があります。互いに競い合って切磋琢磨するよりも、みんなで協力しながら何かを作り上げることに喜びを感じる方が多く見受けられました。
働き方においてもチーム単位で動くことを前提に、互いに助け合い連携しながら仕事を進めたいと考えている学生が多いです。面談で話を聞くと、決して1人でやり遂げる自信がないというわけではなく、一人のアイデアよりも仲間と話し合って出した結論のほうが会社や社会により貢献できると考えているようです。
令和の就活世代の当たり前 3.多様性を受け入れる
インターネットが身近な存在である彼らは日々、さまざまな意見に触れる機会が多いため、多様な価値観を受け入れることが当たり前。国籍や性別など、相手の属性にとらわれることなく、フラットにコミュニケーションを図ろうとします。
また、ジェンダーレスの考え方も浸透しています。「男らしさ」「女らしさ」という価値観に縛られることなく、自分らしいふるまいをすることが大切だと考えます。LGBTQ+についても、芸能人やインフルエンサーなどが自身の性的指向を公表する流れもあり、彼らにとっては身近な存在になっているといえるでしょう。自身がそのような立場でなくても、面接や説明会などでLGBTQ+を揶揄するような発言を聞いてしまうと「会社に対する印象が悪くなった」と話す学生もいるのです。
令和の就活世代は会社に何を求めているのか
令和の就活世代の価値観を整理した上で、ここでは彼らが会社に対して何を求めているのかについてまとめていきます。
学生とのキャリア面談をする際に筆者は、「どのような特徴を備えた会社に行きたいか」ということを必ず聞いています。全ての就職活動世代に当てはまるわけではありませんが、多数派の意見を中心に紹介していきます。
ワークライフバランスを実現できる会社
仕事とプライベートにメリハリをつけるワークライフバランスを重視する傾向があります。仕事だけに人生の時間を使うのではなく、趣味や家族との時間なども大事にしたいと考えます。仕事一辺倒な働き方は敬遠されることが多く、残業や休日出勤をするにしても、「上司の指示ではなく自分が納得感をもって働くのであればOK」という基準を設けている学生もいます。
就職先を選ぶ際も残業時間の長さや年間の休日数、福利厚生が充実しているかなども重要な判断基準にしている学生は想像よりも多いのです。面談した学生の中には仕事内容や会社の規模より、働きやすい環境かどうかを最重要視して企業を選んでいるという学生もいました。
自分自身とフィットする職場と人間関係
以前から企業を選ぶポイントとして、職場の人間関係や雰囲気は重視される項目でした。しかし、現在において顕著なのは「何をするか」よりも「誰とするか」を重視しているように感じます。そのため、自分自身と合う人や職場をいかに見極めるかを重視する学生が多いのです。「上司ガチャ」などという言葉も、それだけ人間関係を気にしているという裏返しなのです。
事業の安定性を実現する会社
将来への期待値が低く現実主義的な彼らは、経営にも安定性を求めます。リーマンショックや東日本大震災、ロシアのウクライナ侵攻などを目の当たりにしているため、大きなリスクに備えたいと考えています。
会社の規模や設立からの年数だけでなく、業界全体の先行きや業界内での会社の立ち位置など、比較的広い視野で会社を選ぼうとします。そのため、近年急拡大し安定が見込めるITや通信業界を志向する学生は非常に多いです。
多様なキャリアプランが用意されている会社
安定的な働き方を求める一方で、多くの選択肢があり、状況に合わせた働く環境を求めます。これまで常識とされてきた年功序列、終身雇用の価値観が崩れる中で、転職や副業を前提とした働き方が一般的だと考えています。
将来的には起業や転職を考えていて、そこから逆算したファーストキャリアを見据え就職活動を進めている学生も少なくないのです。
充実した教育制度がある会社
堅実な考え方企業の研修や教育体制についても関心が高いことが特徴です。数週間、座学の研修だけを受けて「とにかく走りながら覚えなさい!」と現場に放り出されるようなものではなく、働く上での基礎や社会人としての最低限のマナーなどをしっかり学びたいという意識があります。
ただそれは「自分の力で成長する気がない」という後ろ向きな考えではなく「早く一人前になって会社に貢献したい」「市場価値の高い社会人になりたい」という理由を語る学生が多く、むしろ成長意欲の高さを背景にあると感じます。
価値観や特徴を踏まえた採用活動で留意すべきこと
上記のようなことを会社に求めている令和の就活世代を採用するにあたり、ポイントとなるものはどこにあるのでしょう。主に内定を得た学生から聞き取った採用活動上で重視されている情報を元にまとめていきます。
圧迫面接やそれに類するスタイルの面接はNG
ストレス耐性の見極めなどに有効とされている、いわゆる圧迫面接ですが、彼らに対してはあまりいい手段とは言えません。学生にとって面接の場は、社員と関わる数少ない機会。面接官の印象が会社全体の印象になることも珍しくなく、前述の職場の人間関係を重視する彼らにとって、「この会社は高圧的な上司がいる」「このような面接を是とする会社だ」という印象を与えかねません。
実際にこれまで話を聞いた中にも、面接官から厳しく責められたことがきっかけで選考を辞退したと話す学生は少なくありませんでした。
学生とは対等かつ寄り添うような姿勢で
一方で話しやすい雰囲気、相槌を打ちながら学生の話に耳を傾けるというコミュニケーションは、「親身に話ができ、一人の大人として尊重してくれる」という印象となります。また、選考前に対策の伝授や、面接後にフィードバックを伝えることも、自分自身の成長機会のある会社だと好意的に受け止めてもらえるでしょう。
入社後のイメージ・解像度をあげる
彼らはリスクを取ることを避ける方も多く、新しい環境に飛び込むことに抵抗があります。そのため、入社後の具体的なイメージが沸かないと、志望度が上がりきらないのです。入社後の雰囲気や人間関係についてイメージしやすいようなインターンシップや、具体的な仕事内容も聞くことができる社員との座談会を設けることで、学生に安心感を与えることも有効な手段です。 付随して働く様子が分かる動画を掲載しておくのもいいでしょう。
これからの時代、魅力的な会社になるには
幅広いキャリア選択ができる
令和の就活世代にとって、転職は働く選択肢で当たり前の価値観です。ただ、転職を意図する理由は単に会社を変えたいという理由ではなく、幅広い経験をしたいという思いからきていることがほとんどです。いろいろな仕事をすることでスキルを身に付け、市場価値の高い社会人になることで、働き口がなくなるリスクをまず減らすという彼ら特有の考え方かもしれません。
転職にも当然リスクが伴います。特に、新卒時の就職活動で苦労をしてきたからこそ、「転職する可能性は高いけど、一つの会社で働き続けられるならそれがベスト」と思っている学生も意外と多いのです。社内でジョブローテーションを選択できたり、新規事業立ち上げに携われたりする環境が好まれるようになるでしょう。キャリアや仕事の選択肢はこれまで以上に多様化します。優秀な人材を確保するには社内でのキャリア選択ができるようにすることも大切なのです。
また、育休産休といった女性が働き続けられる制度の充実も欠かせません。共働きが当たり前の価値観になり、結婚出産を経ても働き続けたいと考えている女性は年々増えていくでしょう。男性も育休を取得することも増えるでしょうから、子育てをしながらキャリアアップしていくモデルケースを提示することも大切です。
新しい価値観を受け入れる柔軟性
コロナ禍によって短期間で大きく働き方が変わったように、今後どのような時代になってどのような働き方が生まれるかは、不確定な部分が大きいです。また、上記のような特徴や価値観が全ての学生に当てはまるわけでもありません。
そんな中で大切になってくるのは新しい価値観を受け入れることができる、柔軟な組織文化が形成されていることでしょう。これから社会を担っていく若い世代、とりわけ令和の就活世代は多様な価値観を持っています。これまでの常識にとらわれることなく、一見非常識に思えるようなことにもしっかりと耳を傾けることが必要なのです。
そのような姿勢は彼らから魅力的に映るだけでなく、時代の流れに対応できる組織になることにもつながります。目まぐるしく変化する時代を生き抜く会社、そして採用力を向上していくためにも、自社の魅力を整理し、価値観を常にアップデートすることが大切です。