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COLUMN

2023.07.27

新入社員研修の内容やカリキュラムの作り方は?必要な考え方を事例を交えてプロが解説

新入社員研修の内容やカリキュラムの作り方は?必要な考え方を事例を交えてプロが解説
新しい環境でスタートを切った新入社員にとって、入社1年目の過ごし方が、その後のキャリア形成に大きな影響を与えるといっても過言ではありません。特に変化が激しい昨今のビジネス環境下で、効果的な人材育成を実現するために、どのような新入社員研修を行う必要があるのでしょうか。
本コラムでは、新入社員研修の目的や内容、カリキュラム作成のポイントについて、事例を交えながらご紹介いたします。

新入社員研修の目的

新入社員研修に求められるのは、学生から社会人へと役割が変化する過程に伴い、ビジネスに求められるマインドやスタンスを醸成し、必要なスキルを付与していくことです。新入社員研修の目的には、以下のような要素があげられます。

新入社員研修の6つの目的

①  組織文化の理解
   会社としてのミッション・ビジョンや、コンプライアンス、社内のルールなどを理解する

②  ビジネスマインドの醸成
   社会人としての心構えを理解し、仕事に取り組む姿勢やスタンスを身につける

③  ビジネスマナー、ビジネススキルの獲得
   社会人に必要なビジネスマナーや、ビジネスにおける汎用的なスキルを習得する

④  専門知識の獲得
   業務を進めるうえで必要な知識や技術を学習する(配属後に部門ごとに行うケースもある)

⑤  キャリアビジョンの明確化
   会社からの期待や新入社員自身の目標を整理し、今後目指したい姿を明らかにする

⑥  新入社員同士の相互理解
   同期としての仲間意識を高め、お互いに切磋琢磨できる関係性を築く

新入社員研修の目的を考えるうえで必要なこと

新入社員研修の目的を考えるうえでは、以下の視点をもつことが肝要です。

・新入社員の「1人前基準」を考える

自社において、新入社員が「1人前の社員」として現場で活躍している状態を言語化してみましょう。「なにを」「どこまで」できる状態になるのが望ましいのか、具体的なゴールを設定することが大切です。ゴールを踏まえて、新入社員研修の目的を設定する必要があります。

・効果検証の手段を明確化する

新入社員研修の目的に対する、効果検証の方法や手段も考えておきましょう。定量化できる目標は具体的な数値目標を設定したり、マインドやスタンスなどの定性的な目標はたとえば5段階評価ができるシートを作成したりすることが有効です。新入社員研修を実施して終わりではなく、振り返りの仕組みも併せて検討することが求められます。

新入社員研修の内容

新入社員研修の内容は実施目的によって異なり、テーマも多岐にわたりますが、ここでは代表的なプログラムをご紹介します。

ビジネスマインド系の研修

一般的な社会人としてのマインドや、自社に固有のスタンスを身につけさせることを目的とした研修です。

・学生と社会人の違いを知る
・プロとはなにか?を理解する
・コンプライアンスやSNSの使い方などを学ぶ
・職場のルールや社内システムの使い方を理解する
・仕事の進め方や仕事の受け方、報告・連絡・相談のポイントを学ぶ

ビジネスマナー、ビジネススキル系の研修

新入社員研修では、まずは基本となるビジネスマナーを押さえておく必要があります。ビジネススキルも同様に、基本的な「コミュニケーション」や「ビジネスライティング」など、仕事を問わず必要とされる基礎スキルの土台を作りましょう。

・ビジネスマナーの基本(あいさつ、身だしなみ、言葉づかい、電話応対、訪問のマナー、席次・名刺交換など)を習得する
・ビジネスコミュニケーションの基本(話の聴き方、質問の仕方など)を理解する
・汎用的なスキル(ビジネスライティング、プレゼンテーション、PC関連の知識など)を習得する

専門知識に関する研修

新入社員研修を通して専門知識を習得させるためには、まずは企業活動の流れ全体を理解させる取り組みが有効です。実務に必要となる専門的な知識については、現場とも相談のうえで、担当部署や研修範囲をあらかじめ決めておくことが大切です。

・企業活動の流れを把握する
・売上や利益、コストの考え方を理解する
・財務諸表の基本的な知識を学習する
・仕入れや在庫管理、販売に関する基礎知識を獲得する

新入社員研修のカリキュラム作成の進め方とは

新入社員研修のカリキュラムを作成するうえでは、次の4つのステップを意識するとよいでしょう。

Step1|新入社員が目指すべき「1人前基準」を設定する

各事業部門の意見も取り入れながら、まずはどのような状態を「1人前」とするのか、ゴールを決めましょう。そのうえで、新入社員に必要なマインドやスキル(テクニカルスキル、コンセプチュアルスキル、ヒューマンスキル)を分解し、要素として落とし込んでいきます。
尚、「1人前基準」はできるだけ自社の職能要件や職務分掌に照らし合わせて考えることで、評価システムとの乖離を防ぐことができます。

Step2|「1人前基準」を達成するためのストーリーを構築する

目指すべき「1人前基準」に向けたロードマップを、5W3Hに基づいて作成していきます。

・When:「いつ」教育をするのか
 入社後すぐにインプットすべきこと、もしくは段階を踏んで学んでいくことなど、項目を分ける。場合によってはプロジェクト形式で、時間をかけて教育するケースも考えられる

・Where:「どこで」教育をするのか
 オンラインもしくはオフライン、ハイブリッド型など物理的な教育体制を検討する

・Who:「だれが」教育をするのか
 人事部門、現場のいずれかが主体となって育成するのかを明確にする。また研修を行う場合、外部講師のアサインの有無を検討する

・What:「なにを」教育するのか
 前項であげたプログラム内容の要素を踏まえながら、教育すべき内容を決定する

・Why:「なぜ」教育をするのか
 教育する目的を明確にし、新入社員や現場社員に共有する

・How:「どのように」教育をするのか
 研修などOff-JT形式での実施か、OJTもしくはSD(自己啓発)での実施か、手段を検討する

・How many:「どのくらい」教育をするのか
 教育に必要な期間や量を見積もる

・How much:「どのくらい」投資をするのか
 教育に必要な費用やコストを見積もる

Step3|「新入社員研修」のカリキュラムを策定する

ロードマップが完成したら、ようやく「新入社員研修」の検討に移ります。新入社員研修と一口に述べても、「導入研修」や「フォローアップ研修」、「1年間のまとめ研修」などいくつかの手段が考えられます。

本フェーズでも5W3Hの考え方を用いながら、実際のスケジュールを詳細に検討していくことが大切です。たとえば、「現場に出る前に、社会人として基本的なビジネスマナーを習得させたい」というゴールに対して、「いつまでに行うのか」「誰が教えるのか」「どのような要素を盛り込むのか」などを決めていきます。

Step4|PDCAを回しながら振り返りを行う

新入社員研修の終了後は、それぞれの学習目標が達成されているかどうか、企画者を主体に振り返りを行うことが大切です。そのうえで、フォローアップ研修を実施するのか、現場にどのようなサポートを依頼するのかなど、今後のプランを設計していきましょう。

新入社員研修のカリキュラム作成時のポイント

効果的な新入社員研修を実施するために、以下の観点でカリキュラムを作成することをおすすめします。

「新入社員の育成」という長期的な観点で、研修のゴールを設定する

新入社員教育と聞くと、ともすると導入研修の目的や内容のみをイメージしがちですが、まずは「1人前基準」として長期的な視点であるべき姿を明確にし、あるべき姿からの逆算で各研修のゴール設定を行うことが肝心です。

研修目的を踏まえながら、プログラム内容の詳細を検討する

例えば、研修の目的が「学生から社会人へと意識の切り替えを促したい」といったケースの場合、盛り込む要素は以下のようなイメージです。

・学生と社会人のちがい
・プロフェッショナルに求められることとは
・社会人に求められる時間やコスト意識
・協働姿勢の大切さ
・コンプライアンスの理解

特に研修を外部機関に依頼するケースでは、プログラム内容が自社の考える目的を達成できるものかどうかということを、事前に入念にすり合わせしておく必要があります。

インプットとアウトプットを組み合わせたプログラムを構築する

カリキュラムの作成と併せて、具体的なプログラムの進め方もイメージするようにしましょう。

座学だけでなく、適宜アウトプットの機会を設けることも有効です。例えば、グループ内でのディスカッションや、プレゼンテーションを行うなどの手段が考えられます。ただ“正解”を伝えるのではなく、新入社員同士で話し合うことで、より自分ごととして考えられるようになるメリットがあります。また、他者の考えや意見を聞くプロセスを通じて、さまざまな価値観があること、社会ではいろいろな立場の人と協働して仕事をしていく必要があることを学ぶきっかけにもなります。

さらに、オンライン慣れしている昨今の新入社員に関しては、対面でのコミュニケーションに不慣れであることも指摘されています。そうした傾向をもつ新入社員に対しては、なおさらアウトプットの重要性が増してくるでしょう。具体的には、社内外の人とのコミュニケーション場面を想定したロールプレイングなどを行うことで、対面でのコミュニケーションがイメージしやすくなるだけでなく、新入社員自身の不安の解消にもつながります。

新入社員研修の実施事例

新入社員研修の実施方法や内容は、会社によって実にさまざまです。各社が掲げる「1人前基準」と、実際に実施した新入社員研修のカリキュラム例をご紹介します。

A社(メーカー:新入社員数20名)の場合

■1人前基準
 A社のビジョンや理念に沿った行動ができる人材

■新入社員研修の目的
 新入社員にA社のミッション・ビジョン・バリューを理解してもらい、それらを踏まえて今後のキャリアや取り組み目標を考えてもらう

■研修カリキュラム概要(3日間)
 ・A社のミッション・ビジョン・バリュー
 ・A社の歩み
 ・業界におけるA社を取り巻く環境
 ・A社が世の中に提供している価値
 ・A社の未来と可能性について
 ・キャリアデザインの重要性
 ・自身のCANを考える(これまでの人生のたな卸し)
 ・自身のMUSTを考える(会社からの期待)
 ・自身のWILL(A社のビジョンを踏まえた、自身のキャリアビジョンの作成)
 ・プレゼンテーション

B社(金融系コンサルティング:新入社員数45名)の場合

■1人前基準
 組織のビジョンや部門目標および、それらから落とし込まれた各自の目標に対して、自律的に行動し自走できる人材

■新入社員研修の目的
 プロジェクト型かつ体験型の研修を通じて、新入社員に“自ら考え行動する”プロセスを体感してもらう

■研修カリキュラム概要(1.5か月間)
 ・社会人として求められるマインド
 ・ビジネスマナー
 ・ビジネスコミュニケーション
 ・デザイン思考
 ・事例研究
 ・チームビルディング
 ・フィールドワークを通じたビジネスシミュレーション
 ・レジリエンスとモチベーションのセルフマネジメント

今回は、新入社員研修の目的やカリキュラムの作成方法について解説しましたが、いかがでしたでしょうか。ぜひ、貴社の新入社員の社会組織化や早期戦力化を促すためのヒントとして、ご参考いただければ幸いです。

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