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2024.07.04
人事による「新入社員フォローアップ面談」。よくある問題を解決する方法とは?
そこで本コラムでは、人事面談の効果的な進め方や、よく起こりがちな問題に対する対処法をご紹介します。初めて人事面談を行う方、現在実施している人事面談をさらに有意義にしたいと考える方は、ぜひご一読ください。
新入社員フォローアップ面談の目的
新入社員に対するフォローアップ面談には、さまざまな目的があります。同時に、目的に合わせて実施時期や実施担当者も異なるでしょう。代表的な例を以下に紹介します。
面談の目的 | 面談実施時期(目安) | 主な面談実施担当者 |
---|---|---|
日々の取り組みに対する フィードバックを行う |
随時 | ・直属の上司、OJT担当など |
新入社員の成長度合いを確認する | 入社1か月後、3か月後、6か月後、12か月後 | ・人事担当者 ・直属の上司、OJT担当など |
新入社員の悩みや課題を吸い上げる | 入社3か月後、6か月後、12か月後 | ・人事担当者 ・直属の上司、OJT担当、メンターなど |
今後の成長目標を明らかにする | 入社3か月後、6か月後、12か月後 | ・人事担当者 ・直属の上司、OJT担当など |
職場の育成システムが 十分に機能しているかを確認する |
入社3か月後、6か月後 | ・人事担当者など |
尚、面談の目的は単一であるとは限らず、複数の目的を兼ねてフォローアップ面談を行うケースも多々あります。また、企業や職場によって“1人前”になるまでの期間やOJT計画が異なるため、オンボーディング施策全体のスケジュール感に沿って面談を行うことが効果的です。
人事担当者が面談を行うメリット
導入研修が終了すると、新入社員の育成はどうしても現場任せになりがちです。人事部門主導で「新入社員フォローアップ研修」などを実施する企業も増えていますが、集合研修の場では個々の状況にフォーカスすることが難しい可能性もあります。
そこでお勧めしたいのが、「人事担当者による新入社員フォローアップ面談(以下、人事面談)」です。人事面談ならではのメリットは以下のとおりです。
①直属の上司やOJT担当には伝えづらい“本音”を引き出すことができる
直接の評価者である上司や、日常的に接点を持つOJT担当には、なかなか本音で話しづらいこともあるでしょう。人事部が「緊急避難先」という役割を担い、新入社員と良好な関係を構築することで、離職やメンタルダウンを未然に防ぐ効果が期待できます。
②新入社員の悩みを客観的にとらえ、的確なフィードバックを行うことができる
職場配属後の新入社員は、職場のみの人間関係となりがちで、そこで問題を抱えていたとしても解消できない場合があります。人事担当者は、第三者でありながらも、新入社員の職場環境や業務内容をよく理解している“ちょうどよい距離感の先輩”として、客観的な立場と複合的な視点でフィードバックを行いやすいという特徴があります。
③必要に応じて適切な機関に連携することができる
心身の不調を抱える(もしくは、その予兆がある)新入社員を早期に見極め、専門機関とのスムーズな連携を行うことができます。人事担当者ならではの知見や観点から、適切なサポートができるメリットは大きいでしょう。
④今後の配属や、採用活動および教育体制の構築に活かすことができる
職場への適応や業務適性などの面で問題を抱える新入社員には、配置転換という選択肢も挙がるでしょう。また、新入社員の状況を踏まえて、自社の人材採用基準や手法の見直しを行ったり、教育や研修の仕組みを再構築したりといった対応が可能になります。
⑤育成側の課題を把握し、改善につなげることができる
人事面談を実施する意義は、新入社員の状況把握のみでなく、新入社員を取り巻く環境についても情報を収集できることです。すなわち、現場の育成システムが十分に機能しているのか、適切なオンボーディングが実行されているかなどを、正しく把握する機会となります。人事部門が介入することで、現場のフォロー体制が機能しはじめるケースもあり、長期的にも有意義な育成システムの運用に寄与する効果があります。
人事面談でありがちな問題点
一方で、いざ人事面談を実施しようとした際に、以下のような問題がよく見受けられます。
・ 目的に沿った面談にならない
・ 面談を通じて得た情報をうまく蓄積・連携できていない
・ 問題を把握したものの、対処できていない
・ 新入社員の本音を聞き出せているか不安である
・ そもそもマンパワーや時間が足りない
これらの問題点はどのように解決するとよいのでしょうか。1つずつ見ていきましょう。
【ケース①】目的に沿った面談にならない
面談を成功させる秘訣は、何よりも「事前準備」をしっかりと行うことです。新入社員の状況を踏まえて仮説を立て、“このタイミングで”“人事担当者が”面談を行う意義を明らかにしましょう。そのうえで、面談の目的を関わるすべての人に共有し、理解をしてもらうことが大切です。
【ケース②】面談を通じて得た情報をうまく蓄積・連携できていない
その場かぎりの情報収集にならないためにも、面談で得た情報を何にどう活かすか、あらかじめ具体化しておくとよいでしょう。例えば、「次年度の育成システムを考える材料として活用したい」というゴールに対し、
1.新入社員に「上司や先輩社員のどのような関わり方が嬉しかったか(嬉しくなかったか)」「自身の成長目標を達成するために、今後どのようなサポートが必要か」をヒアリングする
2.全体傾向を分析して特徴を明らかにする
3.分析結果をもとに、次年度のOJT期間や進め方を現場に提案する
など、ゴールに対するアプローチを明確にしておくことが、情報を有効活用する近道です。
【ケース③】問題を把握したものの、対処できていない
新入社員の課題を大まかに分類し、各ケースの対応策を見える化しておくことが有効です。例えば、「業務量に関する問題は、まず現場の上長に問題を共有して対策案を挙げてもらう」などです。ここでのポイントは、ただ共有して終わりにしないことです。具体的な対応策の部分まで、現場と人事とが一体となって解決に臨む姿勢が重要です。
【ケース④】新入社員の本音を聞き出せているか不安である
人事担当者側が、スムーズな面談を行うためのスキルを身に付けると同時に、面談を行う環境にも配慮するようにしてください。また、同じ社内の人に話すことへの抵抗が見られる場合は、外部の教育機関などに委託することも1つの手段です。組織や評価などの利害関係が発生しない分、本音を伝えやすく、業務ではなく「自分自身」にフォーカスした話ができる点もメリットです。
【ケース⑤】そもそもマンパワーや時間が足りない
特に対象者の数が多い場合は、人事担当者のみで全新入社員のフォローを行うことが難しい場合もあります。その際も、外部機関を活用することで工数が削減できたり、面談自体の質の向上につながることも期待できます。
人事担当者が面談を行う際に留意すべきこと
人事面談を行ううえでは、「事前準備」「面談実施」「面談終了後」の各フェーズで次のポイントを意識するとよいでしょう。
■事前準備
・面談の目的を明確にする
まずは、何のために面談を実施するのか言語化をし、関係者(新入社員や新入社員の上司など)にきちんと周知しましょう。また、複数名の人事担当者が面談業務に臨む場合は、各担当者とも目的や進め方のすり合わせを行う必要があります。
・ヒアリング内容を精査する
目的を踏まえ、新入社員からどのような情報を引き出したいのか整理をします。限られた時間内で最大限の情報を収集するために、前もってヒアリング内容の優先順位を決めておきましょう。
・ヒアリング内容を面談対象者に周知する
面談対象者に、事前にヒアリング内容を伝達しておきましょう。当日の面談をスムーズに行うために、あらかじめアンケートに回答してもらう方法もあります。
・面談対象者のプロフィールや現状のパフォーマンスを確認する
面談を行う新入社員のプロフィール(採用活動時のエントリーシート、適性検査の結果など)に目を通しておくことで、関係構築がスムーズにできたり、より適切なフィードバックを行いやすくなります。さらに、現状の成果に関する客観的なデータや評価の数値などがあれば、参考にするとよいでしょう。
なお、対象者の上司に、事前に状況をヒアリングすることも有効ではありますが、「思い込み」や「レッテル」につながらないよう留意をしてください。
■面談実施
・守秘義務を伝え、心理的安全性を確保する
面談を進めるうえで、最も重要なポイントは「安心・安全な場」を提供することです。“何を話しても大丈夫”“人事担当者が受け入れてくれる”といった心理的安全性を確保するようにしましょう。そのためには、新入社員のプライバシーを守り、情報の開示範囲をあらかじめ伝える必要があります。
・フラットな立ち位置で臨む
人事担当者はあくまでも中立的な立場で話を聞き、必要に応じてフィードバックを行うようにしましょう。面談対象者への主観的な印象や、対象者の上司や職場に対する噂・思い込みなどは排除し、事実のみを客観的に把握することが大切です。
・コーチングのスキルを活用する
面談の目的にもよりますが、新入社員に対して何らかの示唆や気づきを提供したい場合は、「傾聴」「質問」「承認」「フィードバック」などのコーチングスキルを活用するとよいでしょう。大事なのは、人事側が解を与えるのではなく、新入社員本人から今後のアクションを引き出すことです。できるだけ面談対象者に寄り添い、相手のモチベーションを高められるようなアプローチを心がけてください。
■面談終了後
・ヒアリング内容を整理し、今後の課題を明らかにする
ヒアリング内容は個人ごとに整理し、人事部門のメンバーなど限定された関係者が確認できる状態にしておきます。配属部門に起因する特徴や、新入社員に共通する全体的な傾向などがある場合は、課題点として明確化しておくことで、採用・教育体制のブラッシュアップに役立ちます。
・必要に応じて関連機関と連携する
例えば、メンタル不調の予兆者に対して、専門機関との面談を勧めるなど、必要な対応があれば行うようにします。現場の上長への連携が求められる際は、あらかじめ面談対象者の許可を取ったうえで共有をはかってください。
・定期的なフォローを通じて新入社員の状況を確認する
新入社員に対するフォローアップ面談は、定点観測の場でもあるため、継続的に状況を確認していくことをお勧めします。面談形式での実施が難しい場合は、定期的にアンケートに回答をしてもらうなど、点ではなく線でのフォローを行うことがポイントです。
まとめ
人事面談を効果的に取り入れることで、新入社員の悩みや課題に早期に対処できると同時に、教育システム自体の見直しにも役立てられる効果があります。一方で、なかなか本音を引き出せず、面談が形骸化してしまうケースも散見されます。外部機関の活用も視野に入れながら、より有意義な面談の実施を通して、新入社員のリテンションマネジメントにつなげていただければ幸いです。
弊社では、新入社員フォローアップ面談の代行支援や、面談者のトレーニングなど、新入社員から本音を引き出し、状況を把握するための支援を行っております。ぜひ、お気軽にお問い合わせください。