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COLUMN

2024.09.02

遊ぶように働けば、自然と活躍へ ―オンボーディングにおけるゲーミフィケーションのすすめ―

遊ぶように働けば、自然と活躍へ ―オンボーディングにおけるゲーミフィケーションのすすめ―
人材の流動化が激しい昨今、中途入社者や異動者の増加により、頻繁に新しいメンバーが加わる職場もあるでしょう。
新たに加わったメンバーのなかには、すぐに活躍できる人もいれば、そうでない人もいます。
後者の場合、なかなか新しい仕事に馴染むことができず、仕事に集中できなくなり、パフォーマンスの低下につながる
ケースがあります。そのような状態が続いてしまうと、早期離職を引き起こすことにもなりかねません。
仕事に対するモチベーションを高める施策として、昨今注目されているのが「ゲーミフィケーション」手法の活用です。
そこで今回は、仕事にゲーミフィケーションを取り入れる際のポイントや、オンボーディングにおけるゲーミフィケーションの事例をご紹介します。

ゲーミフィケーションとはなにか

ゲーミフィケーションの基本的な考え方

ゲーミフィケーションとは、ゲームの要素や原則をゲーム以外の分野に適用する取り組みです。 

ゲームと聞くと、テレビゲームやスマホゲームをイメージしがちですが、
私たちが小さい頃から慣れ親しんできた遊びやスポーツなどもゲームの1種です。
みなさんもぜひ、ゲームに取り組んだ自身の記憶を思い返してみてください。楽しかった思い出やワクワクする気持ち、他の事柄を忘れてしまうほど
熱中し没入した感覚がよみがえってくる方も多いのではないでしょうか。 

そのようなゲームならではの没入感や高揚感を、ビジネスや仕事における行動変容に活用する考え方がゲーミフィケーションです。
ゲーミフィケーションの本質的な価値は、「対象者の内発的欲求を引き出し、気持ちを動かして行動を促す」こと。

ここでのポイントは、「内発的な動機づけ」を促すという点です。いわゆる報酬や評価などの外発的動機づけは、一定期間は効果があるものの、
継続が難しい側面があります。一方で、ゲーミフィケーションを通じた体験により心から「楽しい」「ワクワクする」という感覚を得ることで、
モチベーションを持続させる効果が期待できます。

ゲーミフィケーションの効果

ゲーミフィケーションの考え方を仕事に取り入れることで、次のような効果が得られるでしょう。 

①仕事へのモチベーションが高まる

調査によると、「95%の従業員がゲーミフィケーションの仕組みを楽しんでいる」という結果が出ています。※1
仕事の世界に没入させて、成果創出に向けた行動を「ついやりたくなる」状態、すなわち『遊ぶように働く』状態をデザインすれば、
仕事に対するモチベーションが高まります。
特にルーティン化した業務や、前向きに取り組みづらい業務にゲーミフィケーションの要素を取り入れることで、意欲の向上につながりやすくなります。 

②業務のパフォーマンスが向上する

高いモチベーションが継続すれば、自ずと業務の成果も高まるでしょう。ゲーミフィケーションの1つの要素に「競争性」がありますが、
メンバー同士の健全な競争が、さらなるパフォーマンス向上につながると考えられます。

また、仕事を楽しむことで、従業員一人ひとりの満足度が向上し、組織全体の生産性も高まります。結果、組織やチームに対する
コミットメントを高める効果があるといえます。 

③社員一人ひとりの主体性、能動性が高まる

ゲーミフィケーションでは、最終的なゴール(目的)の設定がポイントとなります。目的や目標が明確になれば、それぞれの業務に対する
意義を見出しやすくなり、仕事に能動的に取り組めるようになります。 

ゲーミフィケーションを仕事に取り入れる際の注意点

「ついやりたくなる」状態を生み出すための8つの属性

セガ エックスディー社によると、「ついやりたくなる」人を動かす8つの属性には、
「進展性」「保持性」「希少性」「固有性」「忌避性」「創造性」「社交性」「偶発性」があります。※2 

これらは仕事にゲーミフィケーションを活用する際も転用できる考え方であり、
たとえば以下のような属性を仕事においても応用することができます。

 ・進展性:前に進む・広がる変化を好む属性

数値化された目標や、それに対する進捗が可視化できる施策が有効です。たとえば、営業活動における売上や行動量をポイント化するなど、
積み上げた成果が分かりやすく見える取り組みが挙げられるでしょう。

 ・希少性:手に入りにくいものを好む属性

制限や限定されたものに価値を感じる属性であるため、チーム内で毎月「MVP」を表彰するなど、特別感が得られる施策が効果的です。 

・固有性:「やらなければいけない」と自分ごと化される属性

自身の役割が明確な場合や、共感する物語に対して自分ごと化されると、強い動機づけがなされるとされています。仕事においては、
あえてメンバーの経験値を超えるプロジェクトに任命し、役割を与えてみるとよいでしょう。その際もただプロジェクトを任せるのではなく、
タスクや情報管理をゲーム化するツールを取り入れるなど、プロジェクト全体の進行にもワクワク感を持たせることをおすすめします。 

・社交性:社会とつながりたいと感じる属性

他者とのつながりの実感がポイントとなる属性です。たとえば、社内のチャットツールで「いいね」やスタンプを送り合う。そのうえで、
スタンプを送った数が多い上位者を週次で発表するといったゲーム性を取り入れると、さらにその効果が増すといえるでしょう。

 

ゲーミフィケーションのデザインに必要な要素

仕事において効果的にゲーミフィケーションをデザインしていくためには、以下の要素を意識するとよいでしょう。 

①明確なゴールや目標を設定する

何を目指すか、またなぜそれを目指す必要があるのかを明確にしたうえで、ゲーミフィケーションの仕組みを整えるようにしましょう。
目標を設定する際は、できるだけ達成可能な内容にすることが大切です。 

②進捗を見える化する

具体的な進捗や成長が見えるような仕掛けを取り入れましょう。その際に、他者や他チームとの競争性を演出することも有効です。 

③他者との関わりを重視する

先述した「社交性」にも関連しますが、他者とのつながりやチーム感を持たせることで、ゲーミフィケーションの効果が高まります。
同時に、成果に対して互いに称賛を送り合うなど、それぞれの取り組みを「認める」「褒める」コミュニケーションが肝要です。 

オンボーディングにおいてゲーミフィケーションを活用するポイント

ゲーミフィケーションの考え方は、新たに受け入れる社員のオンボーディング施策にも有効です。特に受け入れから自走までの
プロセス設計において、以下の点を意識するとよいでしょう。 

配属前の研修:仕事の世界にいざなう「没入型」の研修

新しく組織に加わったメンバーは、会社やチームの全体像を把握しきれていません。これはいわゆるロールプレイングゲームにおいて、
「自分が今どこの世界にいて、何を倒せばよいのか分からない」状態と同じです。それゆえに、会社や組織の理解を促す仕掛けが必要であり、
特に配属前の研修においては「没入」させる経験が重要となります。

近年、「イマーシブ(没入)」という概念が人事領域にも取り入れられるようになってきました。一度“没入した経験は強く記憶に残り、
その記憶が、「自分はこの世界(=会社)にいるのだ」と実感させる効果があると言われています。

イマーシブ型研修の一例に、ストーリーの登場人物となり、自ら考え試行錯誤することで実践力を高めるプログラムが挙げられます。
その際にゲーミフィケーションを活用し、強化学習プロセス(報酬とペナルティを基にした学習プロセス)やフロー体験(極度の集中状態)を
成立させる手法を用いることで、受講者の記憶に残りやすい研修を実施することができます。

弊社では、会社の歴史や文化を没入しながら考えることのできる研修事例を多く保有しておりますので、ご興味がございましたらお問い合わせください。

仕事開始時:初心者優遇の「チュートリアル設計」で成功体験を

仕事を始めた段階では、誰もがすぐに十分な成果をあげられるわけではありません。スキルの不足もそうですが、過去の経験で
培ってきた事柄をアンラーニングできずに苦しむ人が多いことも事実でしょう。

だからこそ、ゲーム設計にも用いられる「初心者優遇」の考え方を取り入れ、まずは手厚くメンバーに関わることを心がけてください。
そのうえで、小さな成功体験をたくさん積ませて、「楽しい」「もっとやりたい」と思える状態を作ることが理想的です。

倒すべきが次々と現れるゲームでは、一つひとつ倒していく面白さがあります。同様に、仕事における対峙すべき敵
すなわちできるようになってほしい事柄を明示して、どんどん攻略していくような仕事の流れをデザインできるとよいでしょう。

自走後:ゲーミフィケーションを意識した業務設計やアサインを

独り立ちし、自ら仕事を進められるようになると、進んで楽しみを見出せる人もいれば、マンネリ感を覚える人も出てきます。
それゆえに、「やりたくなる」「頑張りたくなる」仕掛けを定期的に作ることが求められます。特にマネジメント側のみなさんが、
メンバーが楽しく仕事に取り組めるような施策を意識的に取り入れること。そして、業務やタスクのプロセス設計にゲーミフィケーションの
考え方を活用していくことが大切です。

まとめ

仕事もゲームと同様に、「ついやりたくなる」状態を作ることで、多くのメンバーが楽しみながら取り組めるようになるはずです。
特に中途入社や異動で新しく組織に加わったメンバーの活躍を促すためには、オンボーディングのプロセス設計が大切です。
今回ご紹介したゲーミフィケーションの要素をオンボーディングプロセスに取り入れることで、一人ひとりが楽しく働きつつ、高い成果をあげられる
組織を作る一助としていただければ幸いです。

 

 参考文献

※1 ANADEA How Gamification in the Workplace Impacts Employee Productivity https://medium.com/swlh/how-gamification-in-the-workplace-impacts-employee-productivity-a4e8add048e6

※2 SEGAXD社 ゲーミフィケーションとは ゲーミフィケーション1.0から2.0へ  https://segaxd.co.jp/gamification/evolution/#item3