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2023.07.21
これからの企業成長のカギは、中途人材を支援するオンボーディング
誰もが当たり前に転職を考える時代に
石松:最近「中途採用」というキーワードを今まで以上に聞くようになりましたよね。テレビCMやウェブ広告など、生活に身近な部分で見かけるシーンも多くなったと感じています。
森川:そうですね。採用手段も増えていますし、かなり体系化されてきている印象です。ウェブ媒体への求人掲載はもちろん、ヘッドハンティングやダイレクトリクルーティング、そして、リファラル採用やカムバック採用なんかにも力を入れ始めている企業様も多いですよね。採用段階である程度スキルや人となりが分かっている方を採用したいという思いが共通項としてあるように思います。
石松:私も企業様との商談する中で、中途人材の話題が上がることが多くなったと感じています。特に、研修など人材育成の領域は従来新卒社員がメインでしたが、最近では中途社員向けのご相談をよく受けますね。スポットで即戦力を採用するというよりも、より良い人材を見つけるための手段として中途採用をマスな視点で捉えるようになっているのかもしれません。その影響もあってか、最近はハイレイヤー層だけでなく、ミドルエイジと呼ばれる社会人7〜12年目くらいの人材の流動性が激しくなっていると感じます。
前職の“強烈な成功体験”によって生まれるもの
石松:中途採用が活発化する中で、入社後なかなか思ったような能力発揮ができなかったり、いわゆる“コンピテンシー・トラップ*”に陥ってしまうなんてケースも多いと思うんですよね。森川さんは、中途社員が陥りがちな状況としてどんなものが多いと思いますか?
*「コンピテンシー・トラップ」とは、経営学の用語で、企業が既存の主力事業や過去の成功体験にとらわれて従来のビジネスモデルに固執し、新たな可能性を視野に入れなくなること
森川:企業様からよく聞くケースとしては、即戦力を期待されて入社した方って、当然前職でかなり強烈な成功体験や成果を残しているんですよね。それを、良くも悪くもそのまま転職先の企業に持ち込んでしまう。もちろん、今までになかった考えを新しい組織に還元することによる相乗効果も期待できますが、実際はネガティブに働いてしまうことも多くあるんです。なるべく早く新しい組織に馴染んでもらうためにも、事前にきちんと互いの期待値をすり合わせることが求められますよね。
石松:自身の成功体験をあえてリセットしてみる、というのは「アンラーニング」にも通ずる部分ですよね。過去の体験に固執するんじゃなくて、新しい環境や人に触れた時に「あ、そういうやり方もあるんだ」って思える力を養うというか。
一方で、受け入れ側が努力しないといけない部分もありますよね。例えば、中途社員に対する排他的な雰囲気を作らないとか、暗黙知化していることを言語化し、企業のビジョンやDNAをしっかりと伝えていくことも重要。本来高い能力を持っているのに、なかなか結果を出せない状況を防ぐためにも、こうした入社後も継続的に支援をしていく「オンボーディング」は中途採用におけるキーワードになりそうですね。
なぜ中途オンボーディングは進まないのか?
石松:オンボーディングって、ある種当たり前にやるべきことが結構多いと思うのですが、なかなか実践できていない企業が多いのが現状なのかなと。その背景には何があるんでしょうね。
森川:企業様を支援していて思うのは、やはり中途採用が上手くいっている企業は、採用から定着、そして活躍するまでのプロセスが徹底されていますよね。そして、縦割りの組織じゃなくて、関係者全員が一体となってフォローしていく体制が整っている。逆に言えば、体制が整っていないと「これは人事がやってくれていると思ってました」みたいな現場のOJT担当がいる一方で「あれ、これは現場で教えてくれてないの?」と人事は思っていたり。結構よくある話だとは思うのですが、こうしたすれ違いや認識のズレもなかなかオンボーディングが進まない要因なのかなと感じます。
石松:そうですね。あとは、人とのつながりや情報へのアクセサビリティも関係していそうです。僕自身も経験がありますが、やはり中途入社って多かれ少なかれ孤立感を感じる部分はあるものなので、こうした基盤が整っていないと、いかに早く仕事に慣れたとしてもなかなか上手くいかないと思うんです。困った時にちゃんとそれを打ち明けられる人がいるかとか、必要最低限の情報に誰もがアクセスできる環境を作れているかを見直してみて、不足しているのであればサポートが必要ですね。
中途採用の次の“世界観”を作る
石松:個人的には、オンボーディングこそ中途採用における次の世界観をつくるんじゃないかなとも考えていて。というのも、最近「即戦力」の意義が少しずつ変わってきているように思うんですよね。これまで、即戦力採用するからにはある程度自走できる存在であることが大前提で、だからこそ新卒社員ほどの手厚いフォローはしてこなかった。でも、これだけ中途採用が一般化し、ターゲット層が若年化している中でそのスタンスを継続してしまうと、思ったような活躍ができない社員ももちろんいるはずじゃないですか。
森川:そうですね。中途採用って新卒採用よりもはるかに採用コストは上がりますし、採用に関わる方々の工数も相当なものがあると思うので、採用したからにはしっかり定着して活躍していただかないともったいないですし、本来はオンボーディングがかなり求められる領域なんですよね。
石松:同感です。とはいえ、なかなか自社だけで環境構築していくのは難しい部分もあるでしょうから、弊社が提供しているような内製支援に一定の価値があるのではないかなと思います。特に、貴社の事業であるコーチングと弊社の事業である研修の掛け合わせは、オンボーディングの浸透において非常に相性が良いんじゃないかなと思ったりもして。例えば、入社後のタイミングでワークショップを開催して、企業のビジョンやDNAに触れる機会や、自分の経験を改めて棚卸しする機会につなげたりできたら良いですよね。
森川:面白そうですね。第三者だからこそ客観的に見える部分もあると思いますし。弊社のコーチング支援としては、直接コーチが伴走することもありますが、そこまでしなくてもすぐに戦力化できてしまう企業様も中にはいます。そういう企業に共通しているのは、組織のマネージャーやメンターの方々に高いコーチングスキルがあることですね。組織の中で日常的にコーチング的な関わりができることは大きな強みだと思います。
石松:
なるほど。確かに、そもそもなぜ中途採用をするのかという原点に立ち戻れば、目先の人材不足を解消するためというよりも、長い目で見たら企業の成長や事業の拡大なんですよね。だからこそ、中途社員の経験の叡智じゃないですけど、組織としてきちんと吸い上げて全体に波及させていく必要がある。そのためには日頃のコミュニケーションが大事ですが、それを社内で全てやり切るのもなかなか大変ですから、そういう時は私たちのような企業に頼っていただければなと。
森川:よくあるのが、中途社員の方が「もっとこうしたら良いのに」と感じたことを一人で推し進めようとすると、ちょっと周りがざわついたりするじゃないですか(笑)。そうならないためにも、日頃の対話を通じてきちんと吸い上げてあげて、上長やメンターの方が展開してあげるのが最も良いですよね。中途社員の方にスポットライトが当たりつつも、円滑にプロジェクトを推進できるというか。
石松:そうですね。だいたいの企業には3ヶ月くらいの試用期間があるので、その3ヶ月は企業が目指しているものと中途社員自身の経験をリンクさせて、適用していくための期間にできたら理想ですよね。採用して終わりではなくて、入社後しっかり価値創出できるまでのストーリーを作っていくことは、ある種中途採用のブランディングにも繋がると思うんです。入社後活躍できるまでの支援がしっかりあるから、ちゃんと期待通りの結果が出るし、中途人材だからこその価値が創出されていく。そんな採用戦略・人事戦略が、ひいては経営戦略にもつながっていく......みたいなストーリーが一本軸で描けると、やはり強いですよね。
中途人材の活躍を企業の成長につなげるために
石松:本当の意味での即戦力採用を成功させるためのオンボーディング支援についてここまで話してきましたが、森川さんから最後に何かメッセージはありますか?
森川:オンボーディングはどんな企業でも必ずニーズのある領域ですよね。あとはそれをどんな形で取り入れるかだと思いますが、我々のような第三者が伴走する形での支援だからこそできることもあるので、ぜひ施策の一選択肢に入れていただければなと思います。
石松:そうですね。最近では「キャリア自律」なんて言葉もよく耳にしますけど、やっぱり中途社員自身が心の底から情熱を持ったり、能力発揮して貢献していきたいと思ったり、その会社における自分の意志をいかに確立できるかが鍵になると思うんですよね。そういう意味で、我々は社員の意志形成のためのサポートをさせていただければと思いますし、中途人材がどんどん新しい価値を生み出していくような、新たな中途採用後の支援策や世界観を作っていければなと考えています。