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憧れ(Wish)から意志(Will)へ 〜 若手の「“なりたい”を行動に変える」ために、人事ができる問いかけ 〜

憧れ(Wish)から意志(Will)へ 〜 若手の「“なりたい”を行動に変える」ために、人事ができる問いかけ 〜
変化が激しく、正解が見えにくい時代。社員たちが「なんとなく」という言葉で、思考や行動を止めてしまってはいませんか。

本記事では、多くの若手・中堅社員、そして人事の皆様との対話を通じて見えてきた、「憧れ(Wish)」を「意志(Will)」へと変えていく重要性を紐解きます。
自律的にキャリアを築き、納得感を持って働く社員たちが共通して持っている「Willで動く力」とは何か。
研修や面談の場で、彼らの願望を単なる「憧れ」で終わらせず、具体的な「行動」へと昇華させるための、人事としての関わり方のヒントをお伝えします。

はじめに

ここ数年、多くの若手・中堅社員の皆様や、人事部門の方々と研修やミーティングでお話しする機会がありました。その中で感じた、今の時代の若手が抱える「危うさ」と、私たちが向き合うべきテーマがあります。

それは、「これからの時代に求められる、自己決定力と意志の強さをどう育むか」ということです。

私が最近感じている危機感。それは、自己表現の自由さが広がる一方で、真偽不明な大量の情報に「なんとなく」流されてしまっている若手社員が多いのではないか、という感触です。

「なんとなく……」。この言葉は、思考を停止させるキーワードのように思えます。

2026年、世界情勢も社会も、市場の変化も想像を超えるスピードで進んでいます。若手社員たちも、情報の多様化の中で「何を信じればいいのか」という不安や恐怖を抱えているはずです。私自身も不安で日々キャッチアップに必死です。

あるワークショップで、こんな出来事がありました。

世の中の出来事を題材に「どう感じる?」と問いかけると、返ってくるのは「やばいですよね」「怖いですよね」といった反応ばかり。
「自分なりの意見や見解はある?」と深掘りしても、「今はそれどころではない」「仕事が大変なので」といった回答が圧倒的でした。
「不確実な世の中で不安だよね。皆さんはどんな未来を描きたい?」と問いを広げても、

「想像がつかない」
「なんとなく幸せに」
「周囲に今よりも貢献できれば・・・」

といった抽象的な答えが少なくありません。

そこには必ずといっていいほど、「あの人はいいな」「あの人はすごすぎて自分には無理」という、どこか他人事のような「憧れ」がセットでついてきます。

現状も未来も不明瞭なまま、すべてを「なんとなく」で終わらせてしまう。周囲に憧れ、これまた「なんとなく」他人の目標をなぞってみる。果たして、その目標にどれだけの熱量が宿るのでしょうか。その社員は、自分自身を本気で鼓舞できるのでしょうか。

人事が向き合うべきは、この「憧れ(Wish)」をいかに「意志(Will)」へと変えていけるか、という点にあると感じています。
私たちは、社員たちに対してこう問い直す必要があるのかもしれません。

・ 自分の外の世界や、自分自身に目を向け、解像度を上げているか?
・ 未来について、具体性のある目標を持っているか?
・ 「なんとなく」という言葉を多用し、思考を止めていないか?

「あなたはどうしたい?」とただ詰めるのではなく、彼らが一歩踏み出し、より納得感のあるキャリアを築くための材料を、一緒に紐解いていく姿勢が求められています。

自律的に動く人は、何を「前提」にしているのか

これまで多くのプロフェッショナルや、生き生きと仕事に取り組む若手と接してきて、感じることがあります。
着実に成果を上げている人ほど、実は派手な大言壮語を口にしません。
「将来は経営に関わりたい」といった大きな夢も素敵ですが、現実にキャリアを切り拓いている人は、語る内容の「時間軸」が違います。

「今期はこの案件で意思決定の経験を積みます」
「来年までに専門性を獲得するため、毎日これを実践します」

彼らが語るのは、常に「今の行動」です。
未来の夢を語るのではなく、未来を「前提」にして、今の打ち手を決めている。これが「Wish(憧れ)」と「Will(意志)」の決定的な違いです。

Wish 「こうなれたらいいな」という願望(止まっている状態)
Will 「こうなる想定で、今これを動かす」という意志(動いている状態)

やるべきこと自体は、勉強や経験の積み増しなど、他の方と変わらないかもしれません。しかし、一つひとつの行動への「意味付け」が、決定的に異なるのです。

研修=仕事。Wishを越えた先に生まれる「手応え」

研修を例に考えてみましょう。
新入社員研修の場で、私は必ず伝えるようにしています。

「研修も仕事です」

当たり前のことですが、少し厳しく聞こえるかもしれません。しかし、これは事実です。会社は時間、お金、人材という貴重なリソースを投じて、社員に投資しています。その場にいること自体が、すでに「コスト」なのです。

もし研修を、「何か学べたらいいな」というWishの姿勢で受けるとどうなるか。「良い話を聞いたな」と、なんとなく満足して終わってしまいます。
一方で、「この研修で何を得るか」「どんなアウトプットで価値を返すか」を考えて参加する人は、得られる果実が全く違います。

仕事の世界で真に求められるのは、願望ではなく「行動の結果」です。そして結果は、具体的な「Will」からしか生まれない。この厳しさと豊かさを、いかに伝えていくかが人事の腕の見せ所ではないでしょうか。

どうすればWishWillに変えていけるのか

Wishは動機のスタート地点として非常に大切です。問題は、それを「願望のまま放置させてしまうこと」にあります。
人事として、面談や研修でどう変換を促せばいいのか。大切だと思う5つの視点を整理しました。

「〜したい」を「〜する前提」に言い換える

まずは、言葉のデザインを促してみましょう。

・ 「マネージャーになりたい」 → 3年以内にマネージャーになる前提で動く」
・ 「英語ができるようになりたい」 → 「海外案件に関わる前提で、毎日30分勉強する」

言葉が変われば思考が変わり、思考が変わると行動の解像度が上がります。Willは、実際のところ「言葉の設計」から始まるのかもしれません。

期限を置く

WishがWishのままなのは、期限がないからです。「いつか」「将来的に」と言っている間は、行動は後回しになります。人事側から「いつまでに?」と問い、期限を置くことで初めて、逆算思考が動き出します。
蛇足になりますが、弊グループのValueの一つにも「3か月で景色を変える」という言葉があります。常に3か月サイクルでWillを実現することを大切にしています。

行動レベルまで落とし込ませる

「市場価値を上げる」といった抽象的な言葉を、「なんとなく」使わせないことが重要です。

・ どの市場で?
・ どんなスキルで?
・ どのような実績を作る?

ここまで具体化させて初めて、それはWillになります。

「環境のせいにしない」という前提を持たせる

Wishは「上司が良ければ」「チャンスがあれば」と環境に依存しがちです。
対してWillは、「今の環境で何を取りに行くか?」という問いから始まります。環境は選べなくても、そこから何を得るかは自分で決められるという主体性を引き出します。

小さなWillを積み重ねさせる

最初から大きな覚悟は必要ありません。

・ 今日の会議で必ず一度は発言する
・ 今週は自分から1回提案する

小さなWillの積み重ねを認め、自信を持たせることが、確固たるキャリア形成に繋がります。

おわりに

時代は変わり、企業の支援制度をはじめとする「補助輪」は増えました。それは素晴らしいことですがが、最後にペダルを漕ぐのは、社員本人です。
「こうなれたらいいな」というWishは尊いものです。しかし、そこから一歩進んで、「こうなる前提で、今日は何をするか?」と問い直した瞬間、
キャリアは動き出します。

「憧れるのをやめましょう」

有名なアスリートの言葉ですが、その背景には、誰よりも自分の動機を理解し、成果に貪欲にコミットする強い姿勢があります。

Wishを持ち、Willに変える」
「なんとなく、はやめる」

この意識の繰り返しを支援することが、これからの時代に求められる「自律」を育むことに他なりません。
研修のアクションプランも、単なる「なりたい姿」で終わらせず、具体的な「行動のきっかけ」として捉えさせること。それが「なんとなく」から脱却する第一歩です。

AIと共存する世界の中で、社員一人ひとりが自分自身の解像度を高め、一歩踏み出していく。当たり前のことかもしれませんが、それをどう支援し、
実現させていくのか。私自身も、これからもこのテーマを掘り下げ続けていきたいと思います。