株式会社ファーストキャリア (FIRSTCAREER)
ファーストキャリア
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INTERVIEWインタビュー

TEX in雲南

実践的なプログラムで「全国に仲間ができた」と実感

ビジョナリーリーダー
『TEX(True EXperience)ーリーダーズ・キャリア・キャンプ』は、企業人と学生が日本の様々な地域のビジョナリーリーダーたちと共に、地域の社会課題に向き合い切磋琢磨することを通じて、影響を及ぼしあう越境学習プログラムです。

今回は、2020年度TEX(True EXperience)ーリーダーズ・キャリア・キャンプ in雲南で受け入れを担当した加藤完一商店 藤原潤さんに、TEXを経た後の変化やTEXをきっかけに誕生した事業などについて聞きました。
PROFILE
加藤完一商店 

代表 藤原 潤 さん

島根県松江市出身。幼少期は祖父の自宅があった雲南市に親しむ。大学卒業後、シャープ株式会社へ入社。Uターン後、ベンチャー企業勤務を経て、2019年に祖父の店の屋号を引き継ぎ、コットン栽培と綿製品の製造販売を行う加藤完一商店を設立。2021年度TEX(True EXperience)ーリーダーズ・キャリア・キャンプ in雲南の受け入れを担当。

視野を広げる機会をもらい自身の事業をアップデートしたい

TEXを受け入れたきっかけを教えてください。

私は島根県雲南市で綿を使った製品の製造と販売を行う加藤完一商店を営んでいます。現在は、材料をアパレルメーカーに購入いただいたり、自社でTシャツやポロシャツなどの製品の開発をしたりしています。

そんな私がTEXに期待したことは、狭くなりつつあった自分の視野を広げてもらいたいということでした。この事業を始めた頃は私も素人で、すべてのことが新鮮だったんです。しかし、4年目ともなると事業にも慣れ、お客様が何に喜んで何に心動かしていただけるのかがわからなくなっていきました。しかも、私は一人で事業を営んでいるので誰にも相談することができません。TEXをきっかけに新たな視点を取り入れていきたいと考えました。

実際にTEXを実施してどのような印象を抱きましたか。

自分の変化とTEX参加者の方々の変化がシンクロしていくことを感じていました。実は私はTEX参加以前は雲南市の課題についてそこまで深くは考えていなかったんです。それが参加者からの視点を得て、真剣に地域について考えるようになりました。

島根県全域で少子高齢化が進んでいますが、雲南市はその課題に対して積極的に取り組んでいるエリアです。TEXを通じて、私の事業がどう雲南市の役に立つことができるかを考えるようになりました。

ファンコミュニティの開設やツーリズムの実行へ

参加者からは具体的にどのような提案がなされましたか。

提案いただいたプランの中で、短期間でできるものはすでに実装させています。具体的には、全国から綿花を一緒に育てたい方を募り、「コットンクラブ」というコミュニティを立ち上げました。クラブメンバーには、私から種をお送りし、庭やベランダで綿を育ててもらいます。収穫後は、花の部分はドライフラワーやリースとして飾ってもらい、綿は加藤完一商店に送っていただきます。その綿を弊社で作った綿と混ぜ、糸にして商品にし、購入できるようにします。目標の20人はあっという間に達成、すぐに募集終了になる人気ぶりでした。クラブから派生して、例えば、お子様が育てた綿で靴下やハンカチといった製品を作り、それを母の日にプレゼントするといったギフトプランも考えられるようになります。

このような企画は自分では想像もできませんでしたし、一人ではとてもやりきれなかったと思います。それがTEXに参加したみなさんのおかげで実行することができました。これからは、愛着を持って加藤完一商店のファンになってくださる方の輪を広げていき、コミュニティを育てていきたいと思っています。

TEXメンバーは実行にも関わったのですか。

提案を聞いた瞬間にいいアイデアだと思ったのですが、「実行するにはたくさんの準備が必要だから、できたとしても来年だろう」と思っていました。その思いを率直に伝えると、ご提案いただいたチームの方々が「私たちが準備します!」と言ってくださったんです。実際に、コミュニティメンバーに配布する説明冊子を作ってくれたりプロモーションを具体化してくれたりしました。研修という枠を超えて、自分たちのビジネスとして真剣に取り組んでいる姿に感動しましたし、だからこそTEXのプログラムを通じて成長していくのだろうと感じました。

他にはどのような提案がありましたか。

金婚式や銀婚式という言葉がありますが、結婚2年目には綿婚式という伝統があるそうなんです。お恥ずかしながら、私は綿屋でありながら初めて知ったのですが……。島根県は縁結びで有名な土地でもあるので、綿婚式のギフトの商品開発をし、広げていくというご提案をいただきました。

他にも、リトリートをしながら加藤完一商店の綿作りを体験して、汗をかいて学習するツーリズムを提案してくださったチームもありました。私は「自分の仕事を手伝うことに本当に価値があるのだろうか」半信半疑だったのですが、ご提案くださったチームの皆さんは「おもしろいです」と背中を押してくださって。実際に東京のアパレル会社さんから問い合わせをいただいていて、今年実行に移すことができそうです。

TEXでは、私一人では思いつかなかった新鮮な提案をたくさんいただき、新たな可能性に気づくことができました。

実践的なプログラムだからこそ課題解決をする力がつく

参加者の方にはどのような力がついたと感じましたか。

参加者の方々は、研修の枠を超えて、自分で事業を作る経験をなさっていました。この体験は、ご本人のこれからの学業や仕事に大きな影響を与えると思います。さらに、地域課題解決というTEX参加者の皆さんにとって非日常の問題に向き合ったことで、新たな価値を創造したり困難を切り開いたりする力の育成にもつながったのではないでしょうか。

また、雲南市をよくするためにはどうしたらよいか真剣に考えていく中で、ご自身の故郷でも居住エリアでもない地域へ愛情を持ってくださるようになったと感じました。TEXはオンラインでの開催でしたが、実はプログラム期間中に実際に雲南市にきた参加者の方もいたんです。おそらく深く考えていく中で、雲南市へ強い関心を持ち、実際にこの土地を見たいという思いが高まったのではないでしょうか。このように、自分の思いから行動に移す体験は何にも変え難い経験ではないかと思います。

TEXを実施した感想をお願いします。

こうした研修では、研修生が提案して、私がそれを聞いて取捨選択するという構図になりがちだと思います。しかし、TEXでは「一緒に事業を作り上げていく」という感覚を強く持つことができました。事業だけではありません。雲南市についても、「どうしていったらよいと思う?」と尋ねると率直な意見が出てきました。県外の方々の心情を理解するのに非常にありがたい機会となったと感じています。

今では、全国に加藤完一商店のことを真剣に考えてくれる「仲間」ができたという感覚を持っています。本当に、心強いです! これからも、TEXでいただいた提案をどんどん実行に移していきたいと思っています。

取材日|2022年3月24日